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The Style Council全曲解説 [Kindle版]

内容も改訂、その他付録コンテンツも大量に増補しました。
是非読んでみて下さい。

凡例

(ヴァージョン名)←公式のものが存在しない場合便宜的に付けた場合もある
Hon Councilers ←参加メンバー。特筆されない場合ドラムはSteve White、バッキング・ヴォーカルはDee C. Lee。(時期によってはHon CouncilerとしてWhiteやLeeも記載する)
主な収録作品←シングル、オリジナルアルバムと公式度の高い編集盤を優先して記載。
解説←独自の独断と偏見に満ちた解説。

2014年11月24日月曜日

Nzuri Beat

(Live Version)
Hon Councilers
Camelle Hinds : bass
Steve Sidelnyc : percussions

  ホワイティとゲイリー・ウォリスのユニット、M.E.F.F.の曲で、85年ツアーでしばしば演奏された。ホワイティ、カーメルとスティーヴ・シデルニクの3人で演奏されるインスト曲。3人のソロをフィーチャーしている。ウォリスが(シデルニクの代わりに?)参加してプレイされたこともあったようだ。

See the Day

(Live Version)
Hon Councilers
Helen Turner : keybords
Camelle Hinds : bass
Steve Sidelnyc : percussions

  85年ツアーでのディーのソロ曲として定番だった曲。The Paris Matchに代わって彼女のソロコーナーを担うようになった。この時期必ずと言っていいくらい演奏されていたのに、TSCのヴァージョンが公式リリースされていないのが不思議。

 ワルツのリズムで重厚に演奏されるソウルバラード。アルバムShrineのリードシングルとしてリリースされた、彼女の代表曲と言っても間違いないだろう。TSCのヴァージョンとしては間奏のミックのピアノとカーメルのスラップベースの絡みが印象的。コーラスはヘレンの声が目立つような気がするが?

 余談だが、この曲(スタジオヴァージョン)の12インチシングルにはディーとポール、ミック、ホワイティによるThe Paris Matchの再録(カヴァー)と、TSCのライヴからLuckが収録され、TSCのファンは必須のアイテムとなっている。

2014年11月23日日曜日

Times are Tight

(Live Version)

 83年のライヴ音源が残っているジミー・ヤングのカヴァー。原曲リリースの年に早速カヴァー。オリジナルはディスコ調のグルーヴだが、TSCはテンポを上げて後のInternationalistsに近いノリを持った前のめりのファンクに仕上げている。

 参加メンバーは不明だが、おそらく83〜4年のレギュラーが顔を揃えていると思われる。

2014年11月22日土曜日

I Can't Deny Myself

(Live Version)

 89年横浜アリーナで演奏された曲で、なんとカーメルがリードヴォーカルを担当する。ブラコンっぽい感じをシカゴハウスに寄せたようなサウンドのなかなかの佳曲。この曲ももう少し詰めて完成させて欲しかったと思える。

 それにしても、Sure is Sureを共作したり、最終ラインナップのTSC(90年夜のヒットスタジオ出演時)にも顔を見せたりと、カーメルに対するポールの信頼はこの時期結構大きかったのかも知れない。

Depth Change

(Live Version)

 89年ロイヤル・アルバート・ホール公演で演奏。所有音源の音質が悪くてなにをやってるのか解りづらいのだけど、ディーが歌うファンクナンバー。ドラムが非常に打ち込みっぽいが他のハウス系の曲とは明らかにノリが違う。

 この曲もディーのSlam Slamプロジェクトで復活。テンポがかなり落ちたせいかファンクっぽさは後退し、ハウスとしての色合いが強く出たアレンジでレコーディングされた。

Now You've Gone

(Live Version)

 89年のライヴで演奏されたカーティス・メイフィールドのカヴァー。ゲスト扱いでDr.ロバートが女性シンガー(ディーではない、もっとソウルフルな)をバックにヴォーカルをとっている。

 都会的なブルーズと言った感じの曲調で、オリジナルよりはだいぶロック寄りに振ってはいるがミックのオルガンが久々にソウルフル。だがTSCとしての存在感は非常に薄い。残念ながらDr.ロバートのソロとしても発表されていないようだ。

※情報提供:Mikio Nakamuras氏

Fine

(Live Version)

 89年、ロイヤル・アルバート・ホール公演のブートレッグに収録されていて、タイトル不明とされているが、ツアーにシンガーとして同行していたオマーのソロによるアカペラ・パフォーマンス。これを「スタイル・カウンシル」と呼ぶのかはかなり疑問だが……

※情報提供:Mikio Nakamuras氏

Tender Love

(Live Version)

 89年、ロイヤル・アルバート・ホール及び横浜アリーナで演奏された未発表曲。ディーが歌うバラードで、少しCost of Loving期の雰囲気がある。カーメルの弾く色気のあるベースラインが印象的。

 この曲もSlam Slamで採り上げられ陽の目を見た。89年ヴァージョンに比べ平坦になってしまった印象があるのはベースのフレーズのせいか。

You'll Find Love

(Live Version)

 89年、ロイヤル・アルバート・ホールで演奏された未発表曲。Move同様ディーが歌うハウスナンバーだが、ホーンのフレーズなどを聴いているとアレンジ次第では初期TSC的な色も出たかも知れない、とも思える雰囲気がある。もう少し詰めたら面白かったかな、と感じるが、残念ながらTSCにはもう時間がなかった。

 結局TSCでは録音されなかったが、代わりにSlam Slamで採り上げられた。少し落ち着いた感じに整理され、ハウス風味のブラック・コンテンポラリーと言った雰囲気に仕上がっている。

※情報提供:Mikio Nakamuras氏

Move (Dance All Night)

(Live Version)

 89年、ロイヤル・アルバート・ホールで演奏された未発表曲。Modernism : New Decade収録曲と同傾向のハウス。ディーがヴォーカルをとっている。

 91年になってディーのソロ・プロジェクトSlam Slamのアルバム用に録音され多ヴァージョンは89年のライヴより若干テンポが落とされている。

※情報提供:Mikio Nakamuras氏

Just My Type

(Studio Version)

 ポールの楽曲を他のアーティストに提供するためのデモと言われる録音の一つ。公式録音としてはディーのソロアルバムShrineに収録。このヴァージョンでは男性シンガー(Boy Who Cried Wolf同様のノエル・マッキャラか?)とディーがデュエットする。バックトラックは同一のものと思われる。86年の曲だが打ち込みが多用され、87年か89年の曲のように聞こえる。

 ポールが歌うヴァージョンはブートレッグでも聴くことが出来ないようだ。

I am Leaving

(Studio Version)
収録作品
 CD "Here's Some That Got Away"

 Here's Some That Got Awayで初登場した、ディーが歌うナンバー。国内盤のライナーにはCost of Lovingのアウトテイクとあるが、88年録音だし、打ち込みのドラムから判断しても同アルバム用の楽曲とは考え辛い。デモ録音のようにも聞こえる。

 サウンドはむしろConfessions~よりModernism~に近い打ち込みソウルで、アシッドジャズ方面の影響も感じさせるものだ。意外にLike A Gunか、思い切ってWaiting on a Connectionのカップリングにでもしてリリースしたら似合ったかも知れない。録音時期やサウンドから判断してもぴったりじゃないだろうか。

Waiting on a Connection

(Studio Version)
収録作品
 CD "Here's Some That Got Away"

 Confessions of a Pop Groupのアウトテイクで、88年の録音。ファンキーだがメロディが比較的あるし、少なくともIwasdoledadstoyboyよりは良い曲だと思う。入れ替えた方が良かったと思えるくらいだ。おそらくHere's Some That Got Awayで初登場した曲の中では一番強力だと思われる。

 ドラマーはホワイティではなく、誰が叩いているのかは不明(打ち込み?)、ベースはライヴヴァージョンと比較してもカーメルの可能性がある。

 もし当時Modernism : A New Decadeがリリースされていたらシングルのカップリングなどで登場することもあったかも知れない。

(Live Version)

 89年のツアーでは新曲として紹介され、RAH、横浜ともにプレイされている。ライヴでは若干テンポアップされ、よりソウルフルな感覚が強調。力強い演奏になっている。

My Very Good Friend

(Studio Version)
収録作品
 CD "Here's Some That Got Away"

 シングルHave You Ever Had It Blueのセッションでのアウトテイクと言われる曲でポールのオリジナル。

 シングルのコンセプトとしてジャズ的な部分が浮上した段階でカットが決まった可能性もあるが、楽曲の質としても例によってB面っぽさ満開で、アレンジ、メロディともに詰めの甘さが残る。そのあたりも未発表に終わったゆえんかも知れない。非常にポップで耳あたりの良い曲ではあるのだけど。Here's Some That Got Awayで初登場。

 基本的に硬質な音色のシンセベースが使われているのだが、イントロや間奏の一部にスラップベースが登場するのが面白い。カーメルの演奏だろうか?他はディー、ホワイティを含むTSCでの演奏と思われる(パーカッションはシデルニックかも)。ミックがシンセ中心のプレイに移行し始めていて、85年の曲を87年のサウンドで演奏しているような感じにも聴こえる。

Ain't Going Under

(Studio Version)
収録作品
 CD "Here's Some That Got Away"

86年にシングルA面用に作られたと言うが、未発表に終わった曲。正直、シングルとしてのリリースに耐えうる曲には聴こえない。サウンドからしてもこれはデモヴァージョンなんではないだろうか。ミックスも甘いし、イントロの半端っぽさ、打ち込み風にも聞こえる(またはホワイティではない誰かのプレイ?)ドラムなど、本格的なレコーディングには聴こえない。Our Favourite Shopのデラックス・エディションに同アルバム用のデモが数曲収められたが、サウンドの感触が非常に近いのもこの演奏がデモであると思える根拠だ。

 ジャムのGoing Under Groundに対するセルフ・アンサーソングとして作られた曲で、そのせいかTSCには珍しいかなり歪んだ、ハードめのギターが聴かれる。ただしリズムもメロディも全くジャム的ではない。HomebreakersやIt Didn't Matterにも通じるダークな雰囲気のメロディは悪くないが、やはり詰め切れていないようにも感じる。

April's Fool

(Studio Version)
収録作品
 CD "Here's Some That Got Away"

 これもまたシングルHave You Ever Had It BlueのアウトテイクでHere's Some That Got Awayで登場した曲の一つ。ボサノヴァ風の曲で、ポールとミックの共作。

 ベースはカーメルのようには聴こえないからポール、ミック、ホワイティの3人だけでの録音と思われる。手癖で作ってさらりとプレイした感じだ。あまり心には残らないけど少し良い曲。いかにもTSCのB面らしい曲、と言ってもいい(良い意味で)。Walls Come Tumbling Downとカップリングされていても似合ったかも知れない。

 部分的にメロディが不明瞭に聴こえる部分があるのだけど、それが意図的なのかは不明。実際には完成度が低いように聴こえるのは事実で、なんとなくそのシンプルなサウンドと相まってでもデモ録音っぽくも聴こえてしまう。まあ、未発表曲らしい未発表曲と言えるだろう。

Night After Night

(Studio Version)
収録作品
 CD "Here's Some That Got Away"

 86年に録音されたデヴィッド・シーのカヴァーで、Here's Some That Got Awayのライナーには単に「未発表曲」としか表記されていないが、これももしかしたらHome and Abroadのボーナス用のレコーディングだったのかも知れない。TSCのヴァージョンはオリジナルとあまり変化は無いが、濃さが押さえられ、これもCost of Loving寸前という音色になっている。

 と言うか、この曲の最大のポイントは「It Didn't Matterの元ネタである」ということだ。TSCヴァージョンでもベースやギター、クラップなどをよく聴くと結構似ているのだけど、オリジナルを聴くと更に似ている。イントロからもうそっくりのシンセ音やベースラインがそこら中に出て来るのだ。勿論、メロディは全く違うから「パクり」と言うには語弊があるのだけど。

 ライヴではプレイされたことが無いと言うが、むしろスタジオでこの曲を試したところから生まれたのがIt Didn't Matterなのかもしれない。ネタばらしとしての収録と考えても面白い。

Love Pains

(Studio Version)
収録作品
 CD "Here's Some That Got Away"

 Here's Some That Got AwayのライナーノーツによるとHome and Abroadにはスタジオ録音の新曲をボーナストラックとして収録する予定があったらしい。アナログでは2曲をカットしたくらいなので収録時間的に難しいと思われ、信憑性には疑問があるのだが……

 何にしても、ライナーを信じるならその為に86年に新録されたカヴァー曲。原曲はウィリー・クレイトンで、オリジナルよりアップテンポに仕上がっている。

 R&B系のシンガーのカヴァーということもあり、次作に当たるCost of Lovingに近づきつつあるサウンドになっている。特にサウンドの中心がミックのシンセになっているあたりに強く感じる。

 Here's Some That Got Awayで発掘された曲のため詳細なメンバーは不明だが、ベースはポール、パーカッションもホワイティによるものじゃないかと思われる。また、ディーも参加していない様でヴォーカルパートはポールによる一人掛け合いとなっている。

 Here's~のライナーノーツによるとステージで数回プレイされたことがあるらしいが、録音は残っていないと思われる。

A Casual Affair

(Studio Version)
収録作品
 CD "Here's Some That Got Away"
 CD "Our Favourite Shop (Deluxe Edition)"

 85年に録音されたCome to Milton Keyenesのカップリング用の曲と言われるが未発表に終わっている。Here's Some That Got Awayで発掘され初登場、現在ではOur Favourite Shopのデラックス・エディションでも聴ける。ちなみにHere's Some~のオリジナル・ライナーノーツには「Come To~用の曲」という記載は無く、85年録音と書かれているだけ。実際にはOFSのアウトテイクかも知れない(勿論それをCome To~に収録するつもりだった、とは充分考えられるが)。

 なんとなくThe Piccadilly Trailにも近い雰囲気を持ったポップで爽やかな曲で、いかにもこの時期のB面曲という感じ。レコーディングはおそらく3人で行われていると思われる。

 余談だが、なぜかHere's Some~のジャケを見ながら聴くと「後期の弱めの曲」という感じにも聴こえるから不思議(そもそも傾向が似てるんだが)。

Harvest for the World

(Live Version)
Hon Councilers
Tracie : Vocals
Paul Barry : Bass & Vocals
John Robinson : Guitar
Frank Mooney : Drums
Joseph Jones : Keyboards

 83年のテレビ出演時にTSC(ミック&ポール)とトレイシー、クエスチョンズという「レスポンド・オールスターズ」とでも言うべき面々で演奏されたアイズレー・ブラザーズのカヴァー。トレイシーとポール・バリーが主にヴォーカルを取り、ウェラーは後半から歌う。

 演奏は先にレコーディングされており、それに合わせて当て振りしていて、画面ではウェラーがコンガを適当に叩いているが音は聞こえない。

 86年にウェラーがアイズレーのステージにゲスト参加してこの曲を歌う短い映像も残っている。

2014年11月20日木曜日

Everlasting Love

(Live Version)
Drums : Ian Mussington
Percussions : Steve Sidelnyk
Guitar : Simon Eyre
Bass : Dave Foster
Keyboards : Terry Devine King
Keyboards, Brass : Dashiel

収録作品
 DVD "Live at the Full House" (1987 Capitol Hanover)

 2014年現在、CDやレコードでは完全未発表で、ドイツでのTVライヴを収録したLive at Fullhouseでのみリリースされている。ディーがヴォーカルをとるナンバーで、同名のラヴ・アフェアーの曲とは無関係。スタジオ録音もないものと思われる。

 シンプルなエレピを中心にしたバッキングで歌われるあまり特徴の無いソウルバラード。この時期のツアーでは通常ディーはA Woman's Songを歌っており、この曲がどの程度の頻度でプレイされたかは不明だが、曲としてはいまひとつ完成度が低いように思われ、このとき実験的に試されただけかも知れない。

Move On Up

(Live Version)
Hon Councilers
Helen Turner : keybords
Camelle Hinds : bass
Steve Sidelnyc : percussions

収録作品
 12" Single "The Lodgers" (1985 Liverpool)
 album "In Concert" (1985 Wembley Arena)
 Video "Freedom Beat"

  85年ツアーでは定番だったカーティス・メイフィールドのカヴァー。ジャム時代後期のツアーでも定番化しており、その頃はホーンも入れて原曲に忠実なアレンジとなっていた。

 TSCではかなりアレンジを変更している。ポールのギター(リフの符割りも違う)だけで始まり、前半は白玉のオルガンと最小限のドラムが入るだけ。2コーラス目からはフルバンドでの演奏となり、原曲よりかなり激しく、テンポの速いヴァージョンになっている。3コーラス目はディーが歌う。後半にはパーカッションソロも。

 The Lodgersの12インチに収録されたのはリバプール(またはマンチェスター)のライヴとクレジットされているが、これもYou're the Best Thing同様メルボルンでの演奏と全く同じに聴こえる。特に2コーラス目の最初のヴォーカルの揺れが同じ・・・。

 In Concertにはウェンブリー・アリーナでのヴァージョンが収録された。ホーンが同行したライヴでもこの曲はホーン抜きでプレイされていることが解るヴァージョン。このCDではミックのピアノが目立つミックスになっている。

 他に公式にはFreedom Beatという反アパルトヘイトコンサートのビデオにこの曲が収録されている。

A Word from Our Leaders

(Live Version)
Hon Councilers
Camelle Hinds : bass
Steve Sidelnyc : percussions

 Nzri Beatと似たインスト曲だが、同曲と同じメンバー(ホワイト、ハインズ、シデルニク)によるインプロビゼイションにナレーションが載っている。これらの曲のタイトルには混乱があるようで、YouTubeやブートレッグでは混同されてクレジットされていることも多い。

Don't Do It Baby

(Live Version)
Hon Councilers
Vocals : Dee C. Lee
Tenor Saxophone : Billy Chapman
Trombone : Chris Lawrence
Trumpet : Stewart Prosser
Keyboards & Vocal : Helen Turner
Bass : Anthony Harty
Percussions : Steve Sidelnyk

 84年10月のミラノ公演で演奏された曲で、CBSからリリースされたディー最初のソロシングル曲。アルバムShrineには未収録。現在は同作のデラックス盤で聴ける。

 勿論TSCの曲としては現在に至るまで未発表。ポールが原曲にはないハーモニーを付け、後のLuckにも通じるようなシンプルなポップソングとして演奏している。

The Razor's Edge

(Live Version)
Hon Councilers
Vocals : Dee C. Lee
Tenor Saxophone : Billy Chapman
Trombone : Chris Lawrence
Trumpet : Stewart Prosser
Keyboards & Vocal : Helen Turner
Bass : Anthony Harty
Percussions : Steve Sidelnyk

 84年のテレビ出演時などに演奏されたDefunktのカヴァー。原曲は82年リリースなのでワリと早いタイミングでのカヴァーということになるか。

 Hanging Onto a Memoryにも似たファンクナンバーで、原曲より性急でパンキッシュなのはアレンジというよりホワイティとポールの癖みたいなものだろう。ヴォーカルがポールとディーのハーモニーになっているのも原曲との違いか。

 なお、この年同名の映画も公開されているが関係はないようだ。

Shop Around

(Live Version)
Hon Councilers
Vocals : Dee C. Lee
Keyboards & Vocal : Helen Turner
Bass : Anthony Harty
Percussions : Steve Sidelnyk

with Madness

 84年7月、リヴァプールのライヴでマッドネスとの共演で演奏された。スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズのカヴァー。具体的に誰が演奏に参加しているかは音源からは不明だが、Graham McPherson (Vo)は間違いなく、おそらくMike Barsonがオルガンを弾いていると思われる(明らかにミックのスタイルではない)。

 ステージでの一度だけの共演ということもあり、あまり凝ったアレンジはされていない。楽しげな演奏だ。

Stand

(Live Version)
Hon Councilers
Vocals : Dee C. Lee
Tenor Saxophone : Billy Chapman
Trombone : Chris Lawrence
Trumpet : Stewart Prosser
Keyboards & Vocal : Helen Turner
Bass : Anthony Harty
Percussions : Steve Sidelnyk

 言わずと知れたスライ&ファミリー・ストーンのカヴァー。84年7月のライヴで演奏された音源が聴けるが、原曲に忠実な演奏になっているが、One Nation Under a Groove同様ちょっと拙い感じだ。これがまあ、持ち味なんだろう。

 この時期のステージオンリーのカヴァー曲はどれもそうだが、メンバーの持ち回りで歌われていて、かなりミックが目立っている。

Hanging On To A Memory

(Live Version)
Hon Councilers
Vocals : Jayne Williamson
Tenor Saxophone : Billy Chapman
Trombone : Chris Lawrence
Trumpet : Stewart Prosser
Keyboards & Vocal : Helen Turner
Bass : Anthony Harty
Percussions : Steve Sidelnyk

収録作品
 CD "In Concert" (1984 Newcastle City Hall)

 83〜84年ツアーではアンコールで頻繁にプレイされていたチェアメン・オブ・ザ・ボードのカヴァー。テレビ出演の際にもよく演奏していたから、もしかしたらスタジオ録音の予定もあったかも知れない。

 かなり気に入ってプレイされていた様だが、残念ながらあまり出来のいい演奏を聴いたことが無い。In Concertには84年3月のニューカッスルでの音源が収録されており、他にブートレッグなどで数ヴァージョン聴けるが、どれもどこか中途半端感が漂う演奏。アレンジがそもそもキマっていないのかも。それでも5月頃のライヴではもう少しこなれたヴァージョンになってはいるのだけど。

 ジェインとポールの掛け合いが基本になっているが、84年後半のテレビ出演時にはディーを迎えたヴァージョンを披露している(ベースはまだハーティで、過渡期的なメンバー)。編成も例外的だが、演奏面でも後半の盛り上がりが激しくてかなり出来がいい部類に入ると思う。

Up For Grabs

(Live Version)
Hon Councilers
Vocals : Jayne Williamson
Tenor Saxophone : Billy Chapman
Trombone : Chris Lawrence
Trumpet : Stewart Prosser
Keyboards & Vocal : Helen Turner
Bass : Anthony Harty
Percussions : Steve Sidelnyk

収録作品
 CD "In Concert" (1984 London Dominion)
 DVD "Far East and Far Out" (1984 Nakano Sunplaza Hall)

 84年ツアーのアンコールでプレイされていたオリジナル未発表曲。スタジオヴァージョンは録音されたという説もあるが、現在の所未発表。

 なんとなくHere's One That Got Awayにも似ているが、メロディやアレンジも今ひとつ練り切れておらず、結局未発表に終わったのも解る気がする。ポールとミック&ジェインが交互に歌う構成はいかにも初期のスタイル。

 In Concertに収録されたのはロンドンでのライヴヴァージョンだが、何故かライヴビデオPost Modern(中野サンプラザ公演)に収録されたテイクに酷似している。ポールのヴォーカルの細部や、イントロでタイトルをボソッとコールするところ、エンディングの音量の絞り方やトランペットのフレーズ・・・。

 ちなみにそのPost Modernのビデオでは当時タイトルが解らなかったせいかMe Ship Came In!の後にノークレジットで収録されていて、観ている側としてはかなりの混乱をしたのが懐かしい。

One Nation Under A Groove

(Live Version)
Hon Councilers
Vocals : Jayne Williamson
Tenor Saxophone : Billy Chapman
Trombone : Chris Lawrence
Trumpet : Stewart Prosser
Keyboards & Vocal : Helen Turner
Bass : Anthony Harty
Percussions : Steve Sidelnyk

収録作品
 CD "In Concert" (1984 New Castle City Hall)

 84年ツアーまで、主にアンコールなどでプレイされていたファンカデリックのカヴァー。スタジオ録音はなく、公式盤ではIn Concertにニューカッスル公演のヴァージョンが収録。

 オリジナルの混沌を一切はぎ取り、かっちりと、コンパクトにまとめたヴァージョンに仕上げ、Dropping Bombs on the Whitehouseからホーンのフレーズを8ビートにアレンジして組み込んでいる。(このツアーではDropping~もやってるのでこのリフはライヴ中2回登場することになる)。

 しかしタイトルに反してグルーヴ感には乏しいヴァージョンになってしまっているのは、まあご愛嬌というところか。かなりアップテンポで、Strength of Your Natureにノリは似ている(というか、アレ自体がファンカ風を狙った曲なのだけど)。ヴォーカルパートはミック&ジェインから始まってポールが加わる。全体には結構ミックが目立っている感じなのが珍しい。


 

Meeting (Over) Up Yonder

(Live Version)
Hon Councilers
Vocals : Jayne Williamson
Tenor Saxophone : Billy Chapman
Trombone : Chris Lawrence
Trumpet : Stewart Prosser
Keyboards & Vocal : Helen Turner
Bass : Anthony Harty
Percussions : Steve Sidelnyk

収録作品
 CD "In Concert" (1984 New Castle City Hall)

 84年ツアーでオープニングを飾ることが多かったインプレッションズのカヴァー。In Concertで公式盤としては初登場となった。ライヴオンリーの曲で、スタジオ録音はない。

 ここにはニューカッスル公演のテイクが収録されているが、ブートレッグで聴ける他の会場でもほとんど同じ演奏をしている。かなりかっちりとアレンジが出来上がっていたのだろう。まあ、アドリブを入れる余地も無い感じではあるが。

 オープニングに相応しく、初っぱなから勢いを感じさせるサウンドになっている。ヴォーカルもポールを中心にミックとジェインが全体でバックをつけ、ホーンも鳴り響く。カーティスのカヴァーというのも「TSCってのはこういうバンドですよ」と言うコンセプトを見せるのには良い感じだ。初期のステージで「名刺」として使われたのにはそう言う意味があるのかも知れない。

2014年4月6日日曜日

Sure Is Sure

(Album Version)
収録作品
 album "Modernism : New Decade"

 ポールがカーメル・ハインズと共作したナンバー。シングルカットされる予定があったが、アルバム共々幻と消えている。12インチ用に8分22秒のリミックスも作られていたようだ。

 リズムは相変わらずなのだけどアルバムでは一番メロディックな曲であり、シングル化が予定されたのも頷ける。グルーヴ感もThat's Spiritual Feelingの次くらいに感じる。珍しくヴォーカルのミックスが大きめになっているのがポップに聴こえる要因の一つかも知れない。The World Must Come Togetherもこのくらいにすればまだ良かったのに・・・

 ベースはクレジットが無いが、生に聴こえるパートもある(シンセっぽい部分もあるのだけど)。だとすると作者のカーメルが弾いていると考えるのが自然か。コーラスにも参加している可能性がある?

(Live Version)
 89年のツアーでも新曲の中の目玉的存在だった筈だ。ライヴ時点では完全に出来上がっていた様で、RAHでも横浜でもほぼアルバム通りの演奏が聴ける。こっちは間違いなくカーメルがベースを弾いている(コーラスも取っている筈)。

 また、90年のヒットスタジオインターナショナル出演時にはポール、ミック、ホワイティ、カーメルの四人で当て振りではあるがこの曲の演奏シーンを見せていた。ライヴではないのだが、貴重なので記しておく。

Love Of The World

Hon Councilers :
Vocals : Paolo Hewitt

収録作品
 album "Modernism : New Decade"

 これもオーソドックスなハウスナンバー。パオロ・ヒューイット(=カプチーノ・キッド)がヴォーカルでクレジットされているが、イタリア語のセリフのパートを担当。リード・ヴォーカルはポールである。また、Oh Yeahと歌われる女性コーラスはディーではなく、多分サンプリング音源を使ったものだろう。

 全体にとっ散らかったアレンジでどうにも焦点が定まらない印象がある。8分を超えるのだけど、どこにも山が無くて場当たり的にパートを抜き差ししたり、色んな楽器を放り込んだりしているように聴こえる。ミックやポールのプレイもヴォーカルも特筆することは無い。どうにもピンと来ない曲。

 Sure Is SureがシングルカットされていればFree Love Mixと名付けられたこの曲の10分を超えるリミックスがB面になる筈だった。

That Spiritual Feeling

Hon Councilers :
Trumpet : Robert 'Kush' Griffin
Alto Sax : Maceo Perker
Tenor Sax : Pee Wee Ellis
Trombone : Fred Wesley

収録作品

 album "Modernism : New Decade"

 JB'sのホーンセクションをゲストに迎えた「打ち込みジャズファンク」。作者に名を連ねるマルコ・ネルソン(ヤング・ディサイプルズ)がクレジットは無いがベースも担当していると思われる。

 4人のホーンとミックのエレクトリック・ピアノのジャムを基本に出来ていて、ビート以外のほとんどのパートが生のため、アルバムのどの曲と比べても圧倒的に躍動感があるし、ファンキーだ。ポールもバッキングに徹してはいるが久々にホロウ・ボディのギターでジャジーな気分で弾いている様だ。マルコの貢献もあってか、ハウスと言うよりアシッドジャズの香りも漂う。

 この熱さを勿体なく感じたのか、ポールはソロになってから2回この曲をリメイクしている。リメイクと言っても、リズムセクションを生楽器に差し替えたリミックスを作っただけ、つまりTSC時代のミックやディー、勿論JB'sの音も残されている。そっちのヴァージョンでドラムを担当するのは勿論ホワイティ。マルコのベースとポールのギターも本人達により差し替えられている。

Hope (Feelings Gonna Getcha)

収録作品
 album "Modernism : New Decade"

 すこしメロウな雰囲気を持ったハウスナンバー。いや、全曲ハウスなんだけど。バッキングの生ピアノとワウギターが雰囲気を高めている。数回出て来るエレピのソロも良い。

 ヴォーカルは殆どタイトルのフレーズを繰り返すだけだが、Strength of Your Natureの時とは全くニュアンスが違う。あの熱さはポールがいかにシャウトしようと全然無く、むしろクールに抑制したサウンドを聴かせようとしている様だ。

 基本的に悪くない曲だけど、個人的には中盤のリズムソロがどうにもとっ散らかっていて苦手だ。なんか色々やりたいことを整理しないままアレンジしてしまった感じだ。それはアルバム全体にも漂うんだけど……

The World Must Come Together

収録作品
 album "Modernism : New Decade"

 若干遅めのBPMで、結構メロディアスな曲だが基本線はアルバム全体と同じようにハウスビートに埋め込まれている。しかし折角ポップなメロディが小さめにミックスされているのは残念な気もする。ダンスミュージックとしては正しいのかも知れないけど、ハウスにこだわらずに、せめてCost of Lovingの頃の様なアレンジにしていれば「ポップミュージックとして」もっと完成度が高くなったのでは?

 バッキングのエレピが格好良い。音色がいい。それから後半にヴァイブが出てくるが、これはおそらくミックがシンセで演奏していると思われる。

 89年のライヴで何故かプレイされなかった。ライヴ向けな気もするのだけど。

A New Decade

収録作品
 album "Modernism : New Decade"

 幻のラストアルバム、Modernism : A New Decadeの事実上のタイトル曲、というよりアルバム全体のイントロとでもいうべき曲。コードの雰囲気もアレンジも明らかに次に繋がるCan You Still Love Me?のヴァリエーションという感じだ。

 ヴォイスのサンプリングが使われるだけのインスト曲で、随所に登場するオーケストラヒットが時代の音。でも(Can You~もそうだが)今こういう「ピアノリフがバッキングのハウス」を聴くと逆に新鮮な気もする。

 89年ロイヤル・アルバート・ホールのオープニングに使われても不思議はなかったのだが、何故かライヴはCan You Still Love Me?単独でスタートする。そう言うワケでライヴ演奏は無い。

2014年4月1日火曜日

Everybody's On The Run

(Version One)
Hon Councilers:
Vocals : Brian J. Powell

収録作品
 7" Single "Long Hot Summer '89" (Edit)
 12" Single "Long Hot Summer '89" (Full)
 CD "Headstart for Happiness" (Edit)
 CD "Complete Adventures of the Style Council" (Full)

 Modernism : A New Decadeの収録曲で、当時は結局Long Hot Summer '89のカップリングとして世に出た。7インチと、廉価版コンピレーションHeadstart for Happinessにはエディットヴァージョンが、当時の12インチとボックスには8分のフルヴァージョンが収録された。Version OneはFreddie Bastoneのミックス。

 ブライアン・パウエルをヴォーカルに迎えたハウスナンバーで、ポールとディーはバッキング・ヴォーカルに徹している。ミックはエレピを弾いていると思われるが、ソロは無くこれもバッキングとしての演奏。全体的に特筆する様な部分の無い「普通の」ハウスだ。

(Version Two)
収録作品
 12" Single "Long Hot Summer '89"

 Norman Jay & TSCによるミックスとクレジットされていて、ロングヴァージョンの後半という感じでは無く別のリミックス。パウエルのヴォーカルとポールとディーのコーラスが別テイク(アルバムヴァージョンとも違う)になっていて、また、クラップとスネアの手数が(うるさいくらい)多くなっている。CDシングルは存在するが、他のアルバムでは未CD化。

(Album Version)
収録作品
 album "Modernism : New Decade"
 
 全体にディーのヴォーカルが目立ち、逆にブライアン・パウエルのヴォーカル(シングルとは全く違うフレーズを歌っている)は引き気味になっている。バッキングも全く違い、これはミックス違いというより完全な別ヴァージョンと言っていい。少なくともシングルヴァージョンより遥かに格好良い演奏だ。

 ミックもオルガンやエレピを弾きまくっているが、なにより大きく違うのが全体にフィーチャーされたトランペット。プレイヤーのクレジットは無いが、That's Spiritual Feeling同様にJB'sのメンバーが参加している可能性もある。

(Live Version)
 89年のツアーではシングルヴァージョンを少しテンポアップした感じで演奏されている。ヴォーカルもパウエルが参加している様だ。

Can You Still Love Me?

(Vocal)
収録作品
 7" & 12" Single "Promised Land"

 Promised LandのB面としてリリースされたが、本来はModernism : A New Decade用の新曲であり、こちらはオリジナル曲だ。TSCの曲としてはこっちの方が圧倒的に良いし、明らかにクリエイティヴである。

 素人臭いがストイックなハウスビートにサンプリングされたディーのコーラスとかなり遠目にミックスされたポールのヴォーカルが乗り、中盤ではミックのエレピのソロもフィーチャーされる。音の構成としては明らかにTSCのパーツを使っているのに、今まで明らかに無かった方向性であり、こういうことを平気でやるのがTSCらしさだということを思い出させてくれる。

(Dub)
収録作品
 12" Single "Promised Land"

 ダブとは言っても、よく80年代に(勘違いして?)命名されていたように単なるインストと言ってもいい。要するにカラオケであり、ウェラーのヴォーカルは出て来ない。ベツにディレイがかかるワケでもないし。こういうのをダブと呼ばないで欲しい。

(Club Mix / Club Vocal)
収録作品
 12" Single & Ltd. 12" Single "Promised Land"

 通常盤12インチとJoe Smooth Mixの12インチにカップリングされたヴァージョン。名前は違うが同じ物。日本ではリリースされなかった。

 これも8分に及ぶロングヴァージョンで、フロアを意識した淡々としたビートが続く。この曲はこういうミックスが非常に映える。

(Album Version)
収録作品
 album "Modernism : New Decade"

 結局89年にはリリースされず、ボックスセットで初登場したアルバムミックス。アルバムオープニング曲から繋げられており、シングルヴァージョンより若干テンポも上がっているように聴こえる。繋ぎ部分だけかな。シングル同様のリズムに切り替わってからはオリジナル通りのテンポに聴こえるのだけど。ミックスとしてはそれほど大きくは違わない。

(12 O'clock Dub)
収録作品
 Ltd. 12" Single "Promised Land"

 短めのリミックスだが、前述のダブミックスよりはこちらの方が(80年代基準とはいえ)比較にならないくらいダブらしい仕上がり。かなりパーカッシヴに仕上げられていて、個人的には好みのミックス。細かいクラップが気持ちよい。こっちはヴォーカルパートの「使わなさ加減」も良い塩梅。

(Live Version)
 89年のツアーでもフィーチャーされ、シングルより遥かにストレートなビートに乗せて演奏された。勿論ディーも生で歌い、ポールにハーモニーをつけている。

Promised Land

 (Radio Edit)
Hon Councilers:
Vocals : Mary,Benita and Derek

収録作品
 7" & 12" Single "Promised Land"
 CD "Singular Adventures of the Style Council"

 ベストアルバム用の新曲としてリリースされた曲だが、キャンセルされたアルバムModanism : A New Decade関連の作品として考えるべきだろう(この曲自体はアルバム用ではなかった)。シングルとしてリリースされたのは3分弱にエディットされたヴァージョン。

 TSCのヴァージョンと同じ年、つまり89年にジョー・スムースがリリースした曲を間髪入れずにカヴァー。アレンジも基本的に大差なく、リフやリズムアレンジまで殆ど同じになっている。違うのはやっぱりシンガーの資質で、ちょっと気だる目の、クールなオリジナルに対しどうしても熱さ、というより力みが出てしまうのがポールだ。好みの差はあるとは思うが、個人的には原曲に軍配を上げたい。

 見慣れないシンガーがクレジットされているが、明らかにディーよりソウルフルなヴォーカルが聴こえるので、それが彼らの声だろう。また、エンジニアとしてブレンダン・リンチが参加してるのは見逃せない。まだ独特のダビーなミキシングは聴けないが。

(Longer Version / Club Mix)
収録作品
 12" Single "Promised Land"
 Japanese 3" CD Single "Promised Land" (Longer Version / 5:08' edit)
 CD "Complete Adventures of the Style Council" 

 シカゴ・ハウスのカヴァーだが、リミックスを担当したのはなんとデトロイトの重鎮、ホアン・アトキンス。おそらくカーティス・メイフィールド(前作Fairy Tailsのミックス)に次ぐ大物ゲストだ。フロア仕様とはいえ「使える」と「聴ける」のバランスが絶妙なミックスになっている。

 日本盤CDシングルに収録されたのは5分8秒だったが、英国盤の12インチや後のボックスに入ったのは同じ名前で7分を超えるヴァージョン。単純に長さが違うだけでもないようで、Longer Versionが5分、12インチなどのClub Mixというクレジットのものが7分ヴァージョンなのかも知れない。ボックスの表記は誤記か?

(Pianopella)
収録作品
 12" Single "Promised Land"

 ヴォーカルとピアノパートを抜き出してリミックスしたヴァージョンで、これもDJユースを多分に意識したものだと思われる。うっすらとハイハットも聴こえるのだが。

(Joe Smooth's Alternate Club Mix)
収録作品
 Ltd. 12" Single "Promised Land"

 限定12インチに収録されたオリジネイター自らの手によるリミックス。だからと言って特別な印象があるものではなく、ラジオエディットよりフロアっぽく、特に前半はLonger Versionより聴きやすい、ある意味気が利いたミックスとなっている。後半からはほぼインスト状態になっている。ウェラー達はもしかしたらこのヴァージョンの後半部分とPianopellaの2枚使いを推奨したかったのかも知れないが・・・

(Brothers In Rhythm DMC Remix / Latin Orchestral Mix)
収録作品
 Promotional LP "Mixes 1 (DJ Members only) "
 
 DMCなるDJネットワークのメンバー向けプロモ盤に収録されているミックス。ホーンやピアノ、オーケストラなどが大量にオーバーダブされ、かなり他とは趣の異なるミックスになっている。

 プロモ盤はおそらく入手困難だが、このヴァージョンは同ネットワークのサイト、dmcdownload.comから現在でも入手可能。ミックス名はレコードとは異なり、Latin Orchestral Mixとなっているが、おそらく同じヴァージョンと思われる。

(Live Version) ライヴでは89年のロイヤル・アルバート・ホール等でプレイされている。シングルヴァージョンに準拠した演奏の様だ。

2014年3月27日木曜日

Like A Gun

Performed by King Truman

(Original Version / Radio Edit)
収録作品
 12" Single "Like a Gun"

 キング・トルーマン名義でアシッド・ジャズからリリースされた12インチ。TSCの曲とはアナウンスされなかったがどう聴いてもバレバレであり、ポリドールからのクレームですぐに回収になって幻の曲と言われていたが、後にアシッド・ジャズのコンピレーションに収録され聴けるようになった。

 曲としては明らかにModernism : A New Decadeの流れにあるハウスナンバーだが、ディーのヴォーカルとサックス(これもメイシオか!?)をフィーチャーするなど、レーベルカラーに合わせた様なアレンジも施されている。タイトルに引っ掛けたガン・ショット音は明らかに安っぽいが……

 12インチのB面2曲目に入っているのは短縮ヴァージョン。

(Safe Sax Mix)
収録作品
 12" Single "Like a Gun"

 未聴。タイトルはSafe Sexに引っかけている?

(Dub Version)
収録作品
 12" Single "Like a Gun"

 これはちゃんとダブらしいダブ。基本的にRadio Editをベースにダブミックスしているのだろうか。

(Live Version)
 89年のツアーでも演奏されており、更にバレバレなわけだが、こちらはポールもはっきりと歌っている。また、ミックのエレピがバッキングの中枢になり、ドラムやベース(カーメル!)も生な為、ハウスというよりジャズファンク風の仕上がりになっていてかなり格好良いヴァージョンとなっている。ガン・ショットは相変わらずだけど……。

In Love For The First Time

収録作品
 7" & 12" EP "1-2-3-4 (A Summer Quartet)"

 いかにもB面、という感じのポップナンバー。問題はこのEPのリードトラックであるHow She Threw It All Awayもそう言う感じ、ということだが。また、Sweet Loving Waysと殆ど同じ曲でもある。

 A面曲以上に初期のTSCを思わせるのはボサノバ風のリズムを取り入れているからだろう。2ndアルバムからのシングルのカップリングになっていても違和感は感じない。例のごとく固定ファンは絶対にいる「ちょっと良い曲」である。Summer QuartetというEPのコンセプトにあわせてボサノバのアレンジにしたのだと思われるが、爽やかで聴きやすい。

 シングルのジャケにはミュージシャンのクレジットが無いので詳細は不明だが、ドラムもベースも生と思われ、スタイルからしてベースはカーメルと考えていいと思う。パーカッションも生っぽいのでアルバムにも参加しているLittle Jo Ruocco、ドラムはアルバムより後に録音されたとすればリードトラック同様のNick Brownか。

 オリジナルEPのジャケにクレジットされたタイトルはLove The First Timeだが、日本盤3インチCDシングルやボックスセットなどではIn Love For The First Timeになっている。実際の歌詞通りなのは後者。最初は間違ってクレジットされたのかも知れない。

Confessions of a Pop Group

Hon Councilers :
Bass : Camille Hinds
Percussion : Little Jo Ruocco

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 Iwasadoledadstoyboy同様の打ち込みファンクだが、同様と言ったら申し訳ないほどにこちらの方が出来が良い。テンポこそ違う物のやはりMoney-Go-Roundを彷彿とさせるが、要するに(後のBring Back The Funkを聴いて解るように)ウェラーのファンクの引き出しが少ないだけかも知れない。

 前述の通りMoney-Go-Roundのテンポをぐっと落とした感じの曲だが、ドラムは打ち込みでもカーメルによるベースギターが入っているせいかグルーヴにうねりがあり、また、サウンドもストレートでちゃんと「響いてくる」感じがある。無駄にエフェクティヴにしなかったのが正解なんだと思う(つまりIwasadoledadstoyboyは失敗だ、ということだ)。勿論主役二人によるギターやオルガンも格好良い。

 ファンクだからやむを得ないとは言え、やはり曲がだらだらと長い感じがしてしまうのは残念。もう少しメリハリがあっても良かったかも知れない、とは思うが、まあかなり散漫なアルバムのラストとしてはそれなりに締まった感じはあるのではないだろうか。

Confessions 1, 2, & 3

(Studio Version)
Hon Councilers:
Bass : Camille Hinds
Drums : Steve White
Trombone : Chris Lawrence

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

B面では一番いい曲。

 ソウルフルなバラードで、The Gardener of Edenの不満点を解消してくれる曲だ。バッキングのメインがピアノだし、打ち込みも使ってないのでA面の方が似合っているかも知れない。

 参加メンバーもカーメル&ホワイティに加え、ホーンセクションの一人にトロンボーンのクリス・ローレンス(ソロも)がいて、やっぱりお馴染みの顔ぶれには嬉しくなってしまう。勿論彼らの演奏は最高だが、ミックのピアノもいいし、ところどころでポールも(このアルバム中では実は少ないのだが)素晴らしいギターを聴かせてくれる。ソロなんか短いけどCafe Breuの頃みたいな雰囲気でとても良いのだ。

 唯一苦言をいうなら、曲中にかぶさる変な貧乏臭い歓声。あればっかりはどうにかならなかったのか。

(Live Version)
 ホワイティ脱退前、87年後半のツアーで未発表曲として演奏された曲の一つ。

Iwasadoledadstoyboy

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 前の曲から間髪入れずにスタートする打ち込みファンク。タイトルはI Was A Dole Dads Toy Boyと読む。

 Money-Go-Roundを打ち込みで再現してみました、という感じの曲であり、特別にどうというものではない。ミックのオルガンソロは格好良いが、その前後のあまりにも80年代的リッミクスっぽいアレンジはいまいちだし、後半で一瞬だけ出てくるアーサー・ベイカー風を狙って失敗した感じ(またか)のドラムサウンドはあまりにも焦点がはっきりしない。メロディにも魅力が無いし、ちょっと困ってしまう。

 強いていうなら、この後ハウス路線に進む足がかり、プロトタイプ的な一曲と言えないことも無いかも知れない。断言はできないけど。

How She Threw It All Away

Hon Councilers:
Drums : Nick Brown
Bass : Camille Hinds
Flute : Dick Morrisey
Percussion : Little Jo Ruocco

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"
 7" & 12" EP "1-2-3-4 (A Summer Quartet)"

 前項で触れたとおり、そういう傾向の曲が続くからまた厄介なのだ。ポップでキャッチーだがどこか微妙に物足りない曲。こちらの方が微妙に派手なので何故かシングルカットされた。ただし、アルバムもシングルも12インチも全て同じヴァージョン。

 ホワイティは脱退したが、ドラムレスの曲や打ち込みを使った曲が多いので、実はこの曲が唯一他のドラマーが参加している曲ということになる。他のメンバー(フルート、パーカッション)も新顔ばかりで、唯一カーメルが古株として例によって信頼のおけるベースを聴かせている。

 ポップで結構いい曲ではあるのだけど、やっぱりメロディラインが明らかにSeptember(いわずと知れたEW&Fの大ヒット)に似ているのは問題だろう。

 なお、1-2-3-4 (A Summer Quartet)というEPの1曲目としてのカットであり、純粋な「シングルA面曲」ではない。例外的に日本ではプロモ盤のみだがこの曲のシングルとしてIn Love for the First Timeとのカップリングで、アメリカでは公式盤としてLong Hot Summer(未聴だが'89ヴァージョンか?)とのカップリングでシングルカットされている。

Why I Went Missing

Hon Councilers:
Bass : Camille Hinds
Drums : Steve White

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 アルバムB面はアルバムタイトルと同じConfessions of A Pop Groupと名付けられていて、ポップ系の楽曲が並ぶ。トップはLife at the Top People's Health Farmで、2曲目となるのがこの曲ということになる。

 ホワイティとカーメルが参加していて、ポップな曲調は2ndの頃を思わせる。なかなかキャッチーなのだけど「なかなか」止まりで、どう考えてもシングルにはならないタイプの曲。だが、この時期のウェラーのポップナンバーはそう言う曲ばかりなのだ。シングルのB面か、アルバムのB面2曲目(またはラスト前)くらいが非常に良く似合う。でも絶対にこういうタイプの曲のファンはいるのだ。実際のところ、俺はよくSweet Loving WaysやHow She Threw It All Awayと混同する。

 この曲でもカーメルのベースが光っている。メロディアスで気持ちいいラインだが決して出しゃばり過ぎない。逆にホワイティは堅実だが、一瞬ではあるが妙なところで不必要に出しゃばってしまっている。残念。

The Gardener Of Eden (A Three Piece Suite)

Hon Councilers:
Harp : Rupert Parker
Bass : Camille Hinds
Drums : Steve White

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 3パートからなる組曲。

 パート1となるIn The Beginning(2:40まで)はセミ・クラシック、というか映画音楽風のインスト。全編がオーケストラによって演奏されていて、メインとなる楽器はハープ(勿論ハーモニカではない)。「映画音楽風」なだけあって今ひとつ個性に欠ける。挑戦はしてみたものの……という感じだ。

 パート2は全体のタイトルともなっているThe Gardener of Eden(~8:36)。ホワイティとカーメルがリズムセクションをつとめ、安定感のある演奏を聴かせる。特にメロディックなカーメルのベース(フレットレスかな?)とブラスのアレンジが良い。後半ミックのオルガンも入ってきて盛り上がるあたりは絶品だ。

 曲調はソウルジャズっぽい感じで、リードヴォーカルはディー。ただこのアルバム全体の欠点でもあるが、この曲もまた彼女のヴォーカルが平板で、ソウルフルさが全然感じられない。もともとあまり上手い人ではないが、以前持っていた「それでもいい!」っていうパワーも無くて……あまりにも物足りないのだ。非常に惜しい曲だと思う。

 最終パートMourning The Passing Of Timeはミックのピアノソロ。Le Departを更に地味に、短くした様な雰囲気のある曲。最後の45秒程はDiving Repriseなので、実質1分程度の小曲だ。

The Little Boy In A Castle / A Dove Flew Down From The Elephant

(Studio Version)
収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 ミックのピアノソロによるインストナンバー。最初の1分強がThe Little Boy In A Castleで、それ以降がA Dove Flew Down From The Elephantである。

 クラシック風というよりはジャズバラード、いや、ジャズというほどジャジーな雰囲気は無いがクラシカルというワケでもなく、どっちかというとイージーリスニングという感じか。そうは言っても、結構気持ちよいのは流石ミック。

(Live Version)
 89年のロイヤル・アルバート・ホールではThe Little Boy In A Castleのみが、横浜アリーナでは2曲共に演奏されている。どちらが89年ツアーの基本スタイルだったのかは不明。どちらにしてもスタジオ通りのピアノソロ。

Changing Of The Guard

(Studio Version)
Hon Councilers:
Drums : Steve White
Contra Bass : Paul Mogan

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 ホワイティがドラムで参加したメロウなジャズ調の曲。クレジットには無いがストリングスは生だと思われる。Cafe Breuの世界にも近いジャジーなサウンドやアレンジはかなりクールで、格好良い。間奏のでのストリングスが圧巻だ。

 但し、ディーのヴォーカルは黒人の割に黒さが足りなさすぎる。元々そう言うのが資質なんだけど、この曲の場合はソレが効果として上手く働いて無くて、どうしても物足りなさを感じてしまうのもまた事実。あと一歩の感がある。このアルバムでのディーは終始そういう感じだ。

(Live Version)
 89年のツアーでライヴ演奏されている。特に横浜アリーナでは(必要以上に)ムーディーなサックスソロを露払いにスタートするアレンジになっていた。

The Story of Someone's Shoe

Hon Councilers:
Vocal Backing : The Swingle Singers
Vibraphone : Frank Ricottim

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 スゥイングル・シンガーズをフィーチャーした(準)アカペラナンバー。バックは基本的にところどころに出てくるヴァイブのみで、クワイアを従えてポールがソロで歌う。ミックとディーは不参加か?勿論、ギターも入っていない。

 アカペラとしては過去のIt Just Came to Pieces in My Handsよりはるかに本格的だが、独自色はなく、「普通」っぽさが際立つ。だが、メロディは単純によく、サウンドも心地よいから雰囲気ものとして気持ちよく聴ける。それがロックと言う意味でいいのか悪いのかは極めて微妙だが……要するにCost of Lovingの数曲で感じたのと同じ不満だな。「スタイル」に囚われてしまっているのだ。

 なお、A面「Piano Paintings」のなかでピアノが使用されていない唯一の曲である。

it's a Very Deep Sea

(Studio Version)
Hon Councilers:
Paul Mogan : Contra Bass

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 アルバムConfessions of a Pop GroupはA面「Piano Paintings」とB面「Confessions of a Pop Group」のだが、その「Piano Paintings」のオープニングを飾る曲。

 はっきり言って大傑作とは言い難いこのアルバムの中では最高の曲。というか、TSC史上でも上位に来る仕上がり。不満が残るアルバムでもこういう曲が入っているとほっとする。

 多重録音で重ねまくったコーラスが素晴らしいメロディを彩り、それをシンプルなバッキングが支えると言う構造。そのバッキングはピアノと少しのシンバル、ベース、そして波の音が殆どを占める。ドラムのクレジットは無いのだが、ホワイティが参加している可能性もある。

(Live Version)
Bass : Paul Powell
Keyboards : Mark Edwards
Guitar : SImon Eyre
Percussions : Frank Ricotti

収録作品
 In Concert (1987 Hammersmith Odeon)

 ライヴではアルバム発売前、ホワイティ在籍時から演奏されていて、In Concertでそのテイクが聴ける。このヴァージョンもシンプルで素晴らしい。

 89年のツアーでも演奏されていて、基本的には同一のアレンジだ。

(Diving Reprise)
収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 同アルバムA面ラストに収められたIt's a Very Deep Seaの続編。「リプライズ」というが、メロディも全く違うビーチボーイズ風のアカペラ曲。「Diving」という歌詞が共通するだけだが、A面のトータル風の雰囲気を作り出している。CDではGardener of Edenと同じトラック、ラスト50秒に収録されている。

Sweet Loving Ways

収録作品
 7" & 12" Single "Life at The Top Peoples Health Farm"

 久々にOur favourite Shopのころに戻ったようなボサノバ調の曲。84年のシングルB面と言われたらしっくり来るような、ちょっといい曲。名曲には遠いが、少なくともA面曲よりははるかに良い曲だと思う。A面の音に疲れてからこの曲を聴くと「ああ、Style Councilを聴いているなあ」という気持ちになれる。

 だからといってA/B面ひっくり返すべきか、というとそういうワケではなく、明らかにB面向け、ってのもまた事実。かなり熱心なファンが「俺ベスト」にこっそり紛れ込ませるタイプの曲。

 但し残念ながらプロダクションが若干雑な感がある。また、ドラムはクレジットは無いがホワイティと思われるのだが、そのプレイも、例えばWith Everything to Loseに比べて冴えているとは言い難い。「ちょっといい曲」が丁寧に作られていた83〜85年頃を思い起こすと、つくづく残念。

Life at The Top Peoples Health Farm

(Single Version)
収録作品
 7" & 12" Single "Life at The Top Peoples Health Farm"
 album "Confessions of a Pop Group"

 Confessions of a Pop Groupからの先行シングルとしてリリースされた曲。既にホワイティのクレジットは無く、ドラムはサウンド、クレジット両面から考えても打ち込みと思われる。サウンドは「アーサー・ベイカーを狙って失敗してみました」と言う感じにも聞こえる。派手なホーンもクレジットがないし、シンセかも知れない。

 ホワイティが抜け、ディーと3人のバンドになったTSCだが、このシングルではディーの存在感が極端に薄い(不参加?)。ジャケも久々にポールとミックの二人だけだ。
 
 音だけはやたらに派手になったが、何だかものすごく物足りない曲で、Shout To The Topのライヴヴァージョンを発展させたようにも解釈出来るリズムパターンもあまり躍動感を感じない(そういえばタイトルに「Top」が付くし)。

(Spank! [Live at the Top Peoples Health Farm])
収録作品
 CD & 12" Single "Life at The Top Peoples Health Farm"

 少し違うタイトルが関されたこのヴァージョンは、12インチのリードトラックにもなっているが、勿論この曲のリミックスの一つであり、また、ライヴヴァージョンなどでは全く無い。

 インストパートにタイトル通りの「Spank!」というサンプリングヴォイスが繰り返され、ヴォーカルがかなりカットされている。

 いかにも80年代らしい無理矢理感漂う、強引なリミックスが施されたヴァージョン。サンプラーを使わないテープエディットの時代の音である。懐古趣味としては悪くないが、それだけ。

(Extended Remix / Um & Argh Mix)
収録作品
 CD & 12" Single "Life at The Top Peoples Health Farm"

 これもまたいかにも1988年という時代を感じるリミックス。こちらはヴォーカルを生かしたミックスになっている。オリジナルをワリとシンプルに引き延ばした感じのミックスで、それほど特筆する部分はない。Um & Arghって何なんだろう。

 日本盤3インチシングルやドイツ盤12インチなどにはExtended Remixというクレジットで収録されているが、同一のものだ。

2014年3月26日水曜日

Wanted

Hon Councilers:
Bass : Paul Powell

収録作品
 7" & 12" Single "Wanted"
 CD "Greatest Hits"

 黒っぽい方に無理をした反動が出たのか、シングルのみで発表されたこの曲は不思議なくらいポップでキャッチーな曲であった。あまりにも「普通にポップ」なため、リリース当時はつまらない曲だと思っていたし、世間もそういう評価をしていたようだったが、今聴くと単純に楽しくて良い曲だ。メロディもいいし、中間部のちょっとしたブレイクが効いている。シングルリリース直前には日本の24時間テレビで演奏(口パク)している姿が放映された。

 ベーシストとして参加しているPaul PowellはPVにも出演しているが、ここ以外では87年終盤のツアー(ホワイティ参加)にしか姿を見せていない。

 ジャケに書かれているWaiter, There's Some Soup In My Fries(ウェイター、俺の蝿にスープが入ってるんだけど)は曲とは何の関係もない。多分「ちょっとしたジョーク」のつもりなんだけど、完全に滑っているのがポールらしい。
 
 全く別ヴァージョンが存在しない数少ないシングルのひとつ。インストやライヴヴァージョンも無い。

Francoise

(Vocal)
収録作品
 7" & 12" Single "Waiting"
 CD "Complete Adventures of the Style Council"

 WaitingのB面として発売された曲だが、元々はCost of Lovingに付随する映画(?)、JerUSAlemのテーマ曲として作られた曲にヴォーカルパートを加えたもの。

 ポールがストリングスのみをバックに歌うスタイルはA Stones Throw Awayと同じだが、かなり甘めに作られている。それも映画音楽のパロディとして敢えてそうしているのかもしれないが。

 なお、ストリングスのメンバーとアレンジャーのクレジットは無い。

(Theme from JerUSAlem / instrumental)
収録作品
 DVD "The Style Council on Film" (JerUSAlem)

 同曲のインストヴァージョンで、実際にはこちらがオリジナルヴァージョン。とはいえ、こうやって並んで聴いてしまうと単にストリングスパートのみのカラオケである。勿論演奏にはメンバー全員不参加。未CD化だが、DVDで視聴できる。

A Woman's Song

(Album Version)
収録作品
 album "The Cost of Loving"

 ディーがソロで歌う子守歌(Hush little baby don't you cry~で始まる典型的な)。ジャケットにはクレジットがないシークレットトラック扱いの曲。

 ミックのエレピとポールのギター(小さめのミックス)のみをバックに歌われるシンプルな曲。それにしてもディーのヴォーカルは特異だ。黒人女性シンガーが歌うこの手の曲とはとても思えない。ゴスペル臭が一切しないのがディーなのだ。

(Demo Version)
収録作品
 CD "Here's Some That Got Away"

 ポールのギター弾き語りにミックのエレピが加わるかたちで録音されたデモ。テンポは完成版より速く、A Whole Point of No Returnを彷彿とさせる一面もある。使用楽器は完成版と同じだが、バランスが真逆なのが面白い。また、このテイクを聴くとそもそもメロディに黒い要素が皆無なのもよく解る。

(Live Version)
 87年のツアーではSee The Dayに代わるディーのソロコーナーとしてプレイされた。スタジオより若干テンポが速く、更にライヴという関係上ギターがより目立つため、デモに近いバランスに戻っている。

 89年のライヴでも演奏され、こちらはウェラーのギター弾き語りで演奏されている。デモヴァージョンと近いアレンジになっているが、今回はピアノは入っていない。

The Cost Of Loving

(Album Version)
Mix : Alan Leeming

収録作品
 album "The Cost of Loving"
 Japan 7" SIngle "The Cost of Loving"

 アルバムタイトル曲は「裏タイトル曲」にも充分負けない名曲で、結局It Didn't Matterを含めた3曲のおかげでこのアルバムが体を成していると言えるのかもしれない。

 メロディの良さもさることながら、無理にファンキーになろうとせず、TSCらしいなかでこの時代の音を出している感がする点が一番大きい。ソウルを吸収しながらMy Ever Changing Moodsからの連続性も感じるサウンド、と言うコトだ。これはWalking The NightやFairy Talesには圧倒的に欠けていた要素。こういう曲でアルバムが固められたら……というのは酷というものだろうか。

 日本のみでAll Year Roundをカップリングにシングルカットされた。

(12" Version)
収録作品
 7" & 12" Single "Wanted"
 CD "Complete Adventures of the Style Council"

 突如Wantedのカップリングとしてリリースされた再録ヴァージョン。オリジナルより緩やかなアレンジとなり、バッキングはギターとパッド系のシンセ、そしてボンゴが主体になったものに変更されている。ドラムは打ち込みっぽくも聴こえ、ディーもおそらく不参加。Waitingと編成が酷似しているところから同時期のレコーディング(デモテイク?)の可能性も考えられる。なお、12" Versionと言っても7インチにも同じヴァージョンが収録されている。

(The Cost)
収録作品
 7" & 12" Single "Wanted"

 タイトルが変更されているが上記12インチヴァージョンのインスト。但し、ドラムパートが違ったり、ワウギターでメロディが弾かれるなどかなり手が加えられている。未CD化(WantedはCDシングルも出ているので厳密にはCD化されているとも言えるのだが)。7インチ、12インチ共に収録されており、つまりWantedのシングルはどちらを買っても同じ、と言うコトになる。

(Live Version)
 87年のツアーでは当然レギュラー。ほとんどアルバム通りにプレイしている。勿論ステージのハイライトのひとつ。ただ、エンディングのドラミングがホワイティに比べてもっさりしているのが難点。

 89年にも(新アレンジ発表後だが)アルバムヴァージョンのアレンジで演奏されている。このときはホーンセクションもいるのでかなりゴージャスなサウンドになっている。ドラムも87年のIan Mussingtonよりシャープな印象。(Ritchie Stephensという人物らしい?)