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The Style Council全曲解説 [Kindle版]

内容も改訂、その他付録コンテンツも大量に増補しました。
是非読んでみて下さい。

凡例

(ヴァージョン名)←公式のものが存在しない場合便宜的に付けた場合もある
Hon Councilers ←参加メンバー。特筆されない場合ドラムはSteve White、バッキング・ヴォーカルはDee C. Lee。(時期によってはHon CouncilerとしてWhiteやLeeも記載する)
主な収録作品←シングル、オリジナルアルバムと公式度の高い編集盤を優先して記載。
解説←独自の独断と偏見に満ちた解説。

2014年3月27日木曜日

Like A Gun

Performed by King Truman

(Original Version / Radio Edit)
収録作品
 12" Single "Like a Gun"

 キング・トルーマン名義でアシッド・ジャズからリリースされた12インチ。TSCの曲とはアナウンスされなかったがどう聴いてもバレバレであり、ポリドールからのクレームですぐに回収になって幻の曲と言われていたが、後にアシッド・ジャズのコンピレーションに収録され聴けるようになった。

 曲としては明らかにModernism : A New Decadeの流れにあるハウスナンバーだが、ディーのヴォーカルとサックス(これもメイシオか!?)をフィーチャーするなど、レーベルカラーに合わせた様なアレンジも施されている。タイトルに引っ掛けたガン・ショット音は明らかに安っぽいが……

 12インチのB面2曲目に入っているのは短縮ヴァージョン。

(Safe Sax Mix)
収録作品
 12" Single "Like a Gun"

 未聴。タイトルはSafe Sexに引っかけている?

(Dub Version)
収録作品
 12" Single "Like a Gun"

 これはちゃんとダブらしいダブ。基本的にRadio Editをベースにダブミックスしているのだろうか。

(Live Version)
 89年のツアーでも演奏されており、更にバレバレなわけだが、こちらはポールもはっきりと歌っている。また、ミックのエレピがバッキングの中枢になり、ドラムやベース(カーメル!)も生な為、ハウスというよりジャズファンク風の仕上がりになっていてかなり格好良いヴァージョンとなっている。ガン・ショットは相変わらずだけど……。

In Love For The First Time

収録作品
 7" & 12" EP "1-2-3-4 (A Summer Quartet)"

 いかにもB面、という感じのポップナンバー。問題はこのEPのリードトラックであるHow She Threw It All Awayもそう言う感じ、ということだが。また、Sweet Loving Waysと殆ど同じ曲でもある。

 A面曲以上に初期のTSCを思わせるのはボサノバ風のリズムを取り入れているからだろう。2ndアルバムからのシングルのカップリングになっていても違和感は感じない。例のごとく固定ファンは絶対にいる「ちょっと良い曲」である。Summer QuartetというEPのコンセプトにあわせてボサノバのアレンジにしたのだと思われるが、爽やかで聴きやすい。

 シングルのジャケにはミュージシャンのクレジットが無いので詳細は不明だが、ドラムもベースも生と思われ、スタイルからしてベースはカーメルと考えていいと思う。パーカッションも生っぽいのでアルバムにも参加しているLittle Jo Ruocco、ドラムはアルバムより後に録音されたとすればリードトラック同様のNick Brownか。

 オリジナルEPのジャケにクレジットされたタイトルはLove The First Timeだが、日本盤3インチCDシングルやボックスセットなどではIn Love For The First Timeになっている。実際の歌詞通りなのは後者。最初は間違ってクレジットされたのかも知れない。

Confessions of a Pop Group

Hon Councilers :
Bass : Camille Hinds
Percussion : Little Jo Ruocco

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 Iwasadoledadstoyboy同様の打ち込みファンクだが、同様と言ったら申し訳ないほどにこちらの方が出来が良い。テンポこそ違う物のやはりMoney-Go-Roundを彷彿とさせるが、要するに(後のBring Back The Funkを聴いて解るように)ウェラーのファンクの引き出しが少ないだけかも知れない。

 前述の通りMoney-Go-Roundのテンポをぐっと落とした感じの曲だが、ドラムは打ち込みでもカーメルによるベースギターが入っているせいかグルーヴにうねりがあり、また、サウンドもストレートでちゃんと「響いてくる」感じがある。無駄にエフェクティヴにしなかったのが正解なんだと思う(つまりIwasadoledadstoyboyは失敗だ、ということだ)。勿論主役二人によるギターやオルガンも格好良い。

 ファンクだからやむを得ないとは言え、やはり曲がだらだらと長い感じがしてしまうのは残念。もう少しメリハリがあっても良かったかも知れない、とは思うが、まあかなり散漫なアルバムのラストとしてはそれなりに締まった感じはあるのではないだろうか。

Confessions 1, 2, & 3

(Studio Version)
Hon Councilers:
Bass : Camille Hinds
Drums : Steve White
Trombone : Chris Lawrence

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

B面では一番いい曲。

 ソウルフルなバラードで、The Gardener of Edenの不満点を解消してくれる曲だ。バッキングのメインがピアノだし、打ち込みも使ってないのでA面の方が似合っているかも知れない。

 参加メンバーもカーメル&ホワイティに加え、ホーンセクションの一人にトロンボーンのクリス・ローレンス(ソロも)がいて、やっぱりお馴染みの顔ぶれには嬉しくなってしまう。勿論彼らの演奏は最高だが、ミックのピアノもいいし、ところどころでポールも(このアルバム中では実は少ないのだが)素晴らしいギターを聴かせてくれる。ソロなんか短いけどCafe Breuの頃みたいな雰囲気でとても良いのだ。

 唯一苦言をいうなら、曲中にかぶさる変な貧乏臭い歓声。あればっかりはどうにかならなかったのか。

(Live Version)
 ホワイティ脱退前、87年後半のツアーで未発表曲として演奏された曲の一つ。

Iwasadoledadstoyboy

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 前の曲から間髪入れずにスタートする打ち込みファンク。タイトルはI Was A Dole Dads Toy Boyと読む。

 Money-Go-Roundを打ち込みで再現してみました、という感じの曲であり、特別にどうというものではない。ミックのオルガンソロは格好良いが、その前後のあまりにも80年代的リッミクスっぽいアレンジはいまいちだし、後半で一瞬だけ出てくるアーサー・ベイカー風を狙って失敗した感じ(またか)のドラムサウンドはあまりにも焦点がはっきりしない。メロディにも魅力が無いし、ちょっと困ってしまう。

 強いていうなら、この後ハウス路線に進む足がかり、プロトタイプ的な一曲と言えないことも無いかも知れない。断言はできないけど。

How She Threw It All Away

Hon Councilers:
Drums : Nick Brown
Bass : Camille Hinds
Flute : Dick Morrisey
Percussion : Little Jo Ruocco

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"
 7" & 12" EP "1-2-3-4 (A Summer Quartet)"

 前項で触れたとおり、そういう傾向の曲が続くからまた厄介なのだ。ポップでキャッチーだがどこか微妙に物足りない曲。こちらの方が微妙に派手なので何故かシングルカットされた。ただし、アルバムもシングルも12インチも全て同じヴァージョン。

 ホワイティは脱退したが、ドラムレスの曲や打ち込みを使った曲が多いので、実はこの曲が唯一他のドラマーが参加している曲ということになる。他のメンバー(フルート、パーカッション)も新顔ばかりで、唯一カーメルが古株として例によって信頼のおけるベースを聴かせている。

 ポップで結構いい曲ではあるのだけど、やっぱりメロディラインが明らかにSeptember(いわずと知れたEW&Fの大ヒット)に似ているのは問題だろう。

 なお、1-2-3-4 (A Summer Quartet)というEPの1曲目としてのカットであり、純粋な「シングルA面曲」ではない。例外的に日本ではプロモ盤のみだがこの曲のシングルとしてIn Love for the First Timeとのカップリングで、アメリカでは公式盤としてLong Hot Summer(未聴だが'89ヴァージョンか?)とのカップリングでシングルカットされている。

Why I Went Missing

Hon Councilers:
Bass : Camille Hinds
Drums : Steve White

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 アルバムB面はアルバムタイトルと同じConfessions of A Pop Groupと名付けられていて、ポップ系の楽曲が並ぶ。トップはLife at the Top People's Health Farmで、2曲目となるのがこの曲ということになる。

 ホワイティとカーメルが参加していて、ポップな曲調は2ndの頃を思わせる。なかなかキャッチーなのだけど「なかなか」止まりで、どう考えてもシングルにはならないタイプの曲。だが、この時期のウェラーのポップナンバーはそう言う曲ばかりなのだ。シングルのB面か、アルバムのB面2曲目(またはラスト前)くらいが非常に良く似合う。でも絶対にこういうタイプの曲のファンはいるのだ。実際のところ、俺はよくSweet Loving WaysやHow She Threw It All Awayと混同する。

 この曲でもカーメルのベースが光っている。メロディアスで気持ちいいラインだが決して出しゃばり過ぎない。逆にホワイティは堅実だが、一瞬ではあるが妙なところで不必要に出しゃばってしまっている。残念。

The Gardener Of Eden (A Three Piece Suite)

Hon Councilers:
Harp : Rupert Parker
Bass : Camille Hinds
Drums : Steve White

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 3パートからなる組曲。

 パート1となるIn The Beginning(2:40まで)はセミ・クラシック、というか映画音楽風のインスト。全編がオーケストラによって演奏されていて、メインとなる楽器はハープ(勿論ハーモニカではない)。「映画音楽風」なだけあって今ひとつ個性に欠ける。挑戦はしてみたものの……という感じだ。

 パート2は全体のタイトルともなっているThe Gardener of Eden(~8:36)。ホワイティとカーメルがリズムセクションをつとめ、安定感のある演奏を聴かせる。特にメロディックなカーメルのベース(フレットレスかな?)とブラスのアレンジが良い。後半ミックのオルガンも入ってきて盛り上がるあたりは絶品だ。

 曲調はソウルジャズっぽい感じで、リードヴォーカルはディー。ただこのアルバム全体の欠点でもあるが、この曲もまた彼女のヴォーカルが平板で、ソウルフルさが全然感じられない。もともとあまり上手い人ではないが、以前持っていた「それでもいい!」っていうパワーも無くて……あまりにも物足りないのだ。非常に惜しい曲だと思う。

 最終パートMourning The Passing Of Timeはミックのピアノソロ。Le Departを更に地味に、短くした様な雰囲気のある曲。最後の45秒程はDiving Repriseなので、実質1分程度の小曲だ。

The Little Boy In A Castle / A Dove Flew Down From The Elephant

(Studio Version)
収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 ミックのピアノソロによるインストナンバー。最初の1分強がThe Little Boy In A Castleで、それ以降がA Dove Flew Down From The Elephantである。

 クラシック風というよりはジャズバラード、いや、ジャズというほどジャジーな雰囲気は無いがクラシカルというワケでもなく、どっちかというとイージーリスニングという感じか。そうは言っても、結構気持ちよいのは流石ミック。

(Live Version)
 89年のロイヤル・アルバート・ホールではThe Little Boy In A Castleのみが、横浜アリーナでは2曲共に演奏されている。どちらが89年ツアーの基本スタイルだったのかは不明。どちらにしてもスタジオ通りのピアノソロ。

Changing Of The Guard

(Studio Version)
Hon Councilers:
Drums : Steve White
Contra Bass : Paul Mogan

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 ホワイティがドラムで参加したメロウなジャズ調の曲。クレジットには無いがストリングスは生だと思われる。Cafe Breuの世界にも近いジャジーなサウンドやアレンジはかなりクールで、格好良い。間奏のでのストリングスが圧巻だ。

 但し、ディーのヴォーカルは黒人の割に黒さが足りなさすぎる。元々そう言うのが資質なんだけど、この曲の場合はソレが効果として上手く働いて無くて、どうしても物足りなさを感じてしまうのもまた事実。あと一歩の感がある。このアルバムでのディーは終始そういう感じだ。

(Live Version)
 89年のツアーでライヴ演奏されている。特に横浜アリーナでは(必要以上に)ムーディーなサックスソロを露払いにスタートするアレンジになっていた。

The Story of Someone's Shoe

Hon Councilers:
Vocal Backing : The Swingle Singers
Vibraphone : Frank Ricottim

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 スゥイングル・シンガーズをフィーチャーした(準)アカペラナンバー。バックは基本的にところどころに出てくるヴァイブのみで、クワイアを従えてポールがソロで歌う。ミックとディーは不参加か?勿論、ギターも入っていない。

 アカペラとしては過去のIt Just Came to Pieces in My Handsよりはるかに本格的だが、独自色はなく、「普通」っぽさが際立つ。だが、メロディは単純によく、サウンドも心地よいから雰囲気ものとして気持ちよく聴ける。それがロックと言う意味でいいのか悪いのかは極めて微妙だが……要するにCost of Lovingの数曲で感じたのと同じ不満だな。「スタイル」に囚われてしまっているのだ。

 なお、A面「Piano Paintings」のなかでピアノが使用されていない唯一の曲である。

it's a Very Deep Sea

(Studio Version)
Hon Councilers:
Paul Mogan : Contra Bass

収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 アルバムConfessions of a Pop GroupはA面「Piano Paintings」とB面「Confessions of a Pop Group」のだが、その「Piano Paintings」のオープニングを飾る曲。

 はっきり言って大傑作とは言い難いこのアルバムの中では最高の曲。というか、TSC史上でも上位に来る仕上がり。不満が残るアルバムでもこういう曲が入っているとほっとする。

 多重録音で重ねまくったコーラスが素晴らしいメロディを彩り、それをシンプルなバッキングが支えると言う構造。そのバッキングはピアノと少しのシンバル、ベース、そして波の音が殆どを占める。ドラムのクレジットは無いのだが、ホワイティが参加している可能性もある。

(Live Version)
Bass : Paul Powell
Keyboards : Mark Edwards
Guitar : SImon Eyre
Percussions : Frank Ricotti

収録作品
 In Concert (1987 Hammersmith Odeon)

 ライヴではアルバム発売前、ホワイティ在籍時から演奏されていて、In Concertでそのテイクが聴ける。このヴァージョンもシンプルで素晴らしい。

 89年のツアーでも演奏されていて、基本的には同一のアレンジだ。

(Diving Reprise)
収録作品
 album "Confessions of a Pop Group"

 同アルバムA面ラストに収められたIt's a Very Deep Seaの続編。「リプライズ」というが、メロディも全く違うビーチボーイズ風のアカペラ曲。「Diving」という歌詞が共通するだけだが、A面のトータル風の雰囲気を作り出している。CDではGardener of Edenと同じトラック、ラスト50秒に収録されている。

Sweet Loving Ways

収録作品
 7" & 12" Single "Life at The Top Peoples Health Farm"

 久々にOur favourite Shopのころに戻ったようなボサノバ調の曲。84年のシングルB面と言われたらしっくり来るような、ちょっといい曲。名曲には遠いが、少なくともA面曲よりははるかに良い曲だと思う。A面の音に疲れてからこの曲を聴くと「ああ、Style Councilを聴いているなあ」という気持ちになれる。

 だからといってA/B面ひっくり返すべきか、というとそういうワケではなく、明らかにB面向け、ってのもまた事実。かなり熱心なファンが「俺ベスト」にこっそり紛れ込ませるタイプの曲。

 但し残念ながらプロダクションが若干雑な感がある。また、ドラムはクレジットは無いがホワイティと思われるのだが、そのプレイも、例えばWith Everything to Loseに比べて冴えているとは言い難い。「ちょっといい曲」が丁寧に作られていた83〜85年頃を思い起こすと、つくづく残念。

Life at The Top Peoples Health Farm

(Single Version)
収録作品
 7" & 12" Single "Life at The Top Peoples Health Farm"
 album "Confessions of a Pop Group"

 Confessions of a Pop Groupからの先行シングルとしてリリースされた曲。既にホワイティのクレジットは無く、ドラムはサウンド、クレジット両面から考えても打ち込みと思われる。サウンドは「アーサー・ベイカーを狙って失敗してみました」と言う感じにも聞こえる。派手なホーンもクレジットがないし、シンセかも知れない。

 ホワイティが抜け、ディーと3人のバンドになったTSCだが、このシングルではディーの存在感が極端に薄い(不参加?)。ジャケも久々にポールとミックの二人だけだ。
 
 音だけはやたらに派手になったが、何だかものすごく物足りない曲で、Shout To The Topのライヴヴァージョンを発展させたようにも解釈出来るリズムパターンもあまり躍動感を感じない(そういえばタイトルに「Top」が付くし)。

(Spank! [Live at the Top Peoples Health Farm])
収録作品
 CD & 12" Single "Life at The Top Peoples Health Farm"

 少し違うタイトルが関されたこのヴァージョンは、12インチのリードトラックにもなっているが、勿論この曲のリミックスの一つであり、また、ライヴヴァージョンなどでは全く無い。

 インストパートにタイトル通りの「Spank!」というサンプリングヴォイスが繰り返され、ヴォーカルがかなりカットされている。

 いかにも80年代らしい無理矢理感漂う、強引なリミックスが施されたヴァージョン。サンプラーを使わないテープエディットの時代の音である。懐古趣味としては悪くないが、それだけ。

(Extended Remix / Um & Argh Mix)
収録作品
 CD & 12" Single "Life at The Top Peoples Health Farm"

 これもまたいかにも1988年という時代を感じるリミックス。こちらはヴォーカルを生かしたミックスになっている。オリジナルをワリとシンプルに引き延ばした感じのミックスで、それほど特筆する部分はない。Um & Arghって何なんだろう。

 日本盤3インチシングルやドイツ盤12インチなどにはExtended Remixというクレジットで収録されているが、同一のものだ。

2014年3月26日水曜日

Wanted

Hon Councilers:
Bass : Paul Powell

収録作品
 7" & 12" Single "Wanted"
 CD "Greatest Hits"

 黒っぽい方に無理をした反動が出たのか、シングルのみで発表されたこの曲は不思議なくらいポップでキャッチーな曲であった。あまりにも「普通にポップ」なため、リリース当時はつまらない曲だと思っていたし、世間もそういう評価をしていたようだったが、今聴くと単純に楽しくて良い曲だ。メロディもいいし、中間部のちょっとしたブレイクが効いている。シングルリリース直前には日本の24時間テレビで演奏(口パク)している姿が放映された。

 ベーシストとして参加しているPaul PowellはPVにも出演しているが、ここ以外では87年終盤のツアー(ホワイティ参加)にしか姿を見せていない。

 ジャケに書かれているWaiter, There's Some Soup In My Fries(ウェイター、俺の蝿にスープが入ってるんだけど)は曲とは何の関係もない。多分「ちょっとしたジョーク」のつもりなんだけど、完全に滑っているのがポールらしい。
 
 全く別ヴァージョンが存在しない数少ないシングルのひとつ。インストやライヴヴァージョンも無い。

Francoise

(Vocal)
収録作品
 7" & 12" Single "Waiting"
 CD "Complete Adventures of the Style Council"

 WaitingのB面として発売された曲だが、元々はCost of Lovingに付随する映画(?)、JerUSAlemのテーマ曲として作られた曲にヴォーカルパートを加えたもの。

 ポールがストリングスのみをバックに歌うスタイルはA Stones Throw Awayと同じだが、かなり甘めに作られている。それも映画音楽のパロディとして敢えてそうしているのかもしれないが。

 なお、ストリングスのメンバーとアレンジャーのクレジットは無い。

(Theme from JerUSAlem / instrumental)
収録作品
 DVD "The Style Council on Film" (JerUSAlem)

 同曲のインストヴァージョンで、実際にはこちらがオリジナルヴァージョン。とはいえ、こうやって並んで聴いてしまうと単にストリングスパートのみのカラオケである。勿論演奏にはメンバー全員不参加。未CD化だが、DVDで視聴できる。

A Woman's Song

(Album Version)
収録作品
 album "The Cost of Loving"

 ディーがソロで歌う子守歌(Hush little baby don't you cry~で始まる典型的な)。ジャケットにはクレジットがないシークレットトラック扱いの曲。

 ミックのエレピとポールのギター(小さめのミックス)のみをバックに歌われるシンプルな曲。それにしてもディーのヴォーカルは特異だ。黒人女性シンガーが歌うこの手の曲とはとても思えない。ゴスペル臭が一切しないのがディーなのだ。

(Demo Version)
収録作品
 CD "Here's Some That Got Away"

 ポールのギター弾き語りにミックのエレピが加わるかたちで録音されたデモ。テンポは完成版より速く、A Whole Point of No Returnを彷彿とさせる一面もある。使用楽器は完成版と同じだが、バランスが真逆なのが面白い。また、このテイクを聴くとそもそもメロディに黒い要素が皆無なのもよく解る。

(Live Version)
 87年のツアーではSee The Dayに代わるディーのソロコーナーとしてプレイされた。スタジオより若干テンポが速く、更にライヴという関係上ギターがより目立つため、デモに近いバランスに戻っている。

 89年のライヴでも演奏され、こちらはウェラーのギター弾き語りで演奏されている。デモヴァージョンと近いアレンジになっているが、今回はピアノは入っていない。

The Cost Of Loving

(Album Version)
Mix : Alan Leeming

収録作品
 album "The Cost of Loving"
 Japan 7" SIngle "The Cost of Loving"

 アルバムタイトル曲は「裏タイトル曲」にも充分負けない名曲で、結局It Didn't Matterを含めた3曲のおかげでこのアルバムが体を成していると言えるのかもしれない。

 メロディの良さもさることながら、無理にファンキーになろうとせず、TSCらしいなかでこの時代の音を出している感がする点が一番大きい。ソウルを吸収しながらMy Ever Changing Moodsからの連続性も感じるサウンド、と言うコトだ。これはWalking The NightやFairy Talesには圧倒的に欠けていた要素。こういう曲でアルバムが固められたら……というのは酷というものだろうか。

 日本のみでAll Year Roundをカップリングにシングルカットされた。

(12" Version)
収録作品
 7" & 12" Single "Wanted"
 CD "Complete Adventures of the Style Council"

 突如Wantedのカップリングとしてリリースされた再録ヴァージョン。オリジナルより緩やかなアレンジとなり、バッキングはギターとパッド系のシンセ、そしてボンゴが主体になったものに変更されている。ドラムは打ち込みっぽくも聴こえ、ディーもおそらく不参加。Waitingと編成が酷似しているところから同時期のレコーディング(デモテイク?)の可能性も考えられる。なお、12" Versionと言っても7インチにも同じヴァージョンが収録されている。

(The Cost)
収録作品
 7" & 12" Single "Wanted"

 タイトルが変更されているが上記12インチヴァージョンのインスト。但し、ドラムパートが違ったり、ワウギターでメロディが弾かれるなどかなり手が加えられている。未CD化(WantedはCDシングルも出ているので厳密にはCD化されているとも言えるのだが)。7インチ、12インチ共に収録されており、つまりWantedのシングルはどちらを買っても同じ、と言うコトになる。

(Live Version)
 87年のツアーでは当然レギュラー。ほとんどアルバム通りにプレイしている。勿論ステージのハイライトのひとつ。ただ、エンディングのドラミングがホワイティに比べてもっさりしているのが難点。

 89年にも(新アレンジ発表後だが)アルバムヴァージョンのアレンジで演奏されている。このときはホーンセクションもいるのでかなりゴージャスなサウンドになっている。ドラムも87年のIan Mussingtonよりシャープな印象。(Ritchie Stephensという人物らしい?)

Waiting

(Studio Version)
Mix : John Valentine

収録作品
 7" & 12" Single "Waiting"
 album "The Cost of Loving"

 英国ではシングルカットされた。当時の基本メンバーのみでレコーディングされているが、ギターも殆ど聴こえないし、ディーの声も出てこない。基本的にミックとホワイティがバッキングを作り、そこにポールがヴォーカルを乗せたと言う感じだろうか。

 これもあまり特徴の無い80年代的バラード。サビの低いところへ行く時に音程が怪しくなるので聴いていて今一つ落ち着かない。

(instrumental)
収録作品
 12" Single "Waiting"

 12インチに収録されたヴァージョン。ヴォーカルを抜いただけの所謂「カラオケ」である。未CD化ではあるが、特別に欲しいものではない。

(Alternate Vocal Version)
Vocal : Noel McCalla

収録作品
 CD "Classic Style Council (Universal Masters Series)"

 バッキングは同じだが、リードヴォーカルをポールではない別人がとった珍品のひとつ。初出は他項でも触れたプロモ盤。
 何故かこの曲だけがユニヴァーサルからリリースされた廉価盤コンピレーション、Classic Style Council (Universal Masters Series)というCDに収録され唐突に一般発売された。

Walking The Night

(Studio Version)
Hon Councilers:
Bass : Camelle Hinds
Trumpet : Guy Barker, Roddy Lorimer, Luke Tunney
Trombone : Chris Lawrence, Pete Thams,Ashley Slater
Backing Vocals : John Valentine
Flugel Horn : Guy Barker
Mix : Carl Beatty

収録作品
 album "The Cost of Loving"

 これもまたFairy Tales同様「イメージしたままホワイトソウルしてみました」的な曲。解りやすく非常に気持ちよく聴ける曲で、当時TSCがお洒落呼ばわりされた責任の一端は明らかにこの手の曲にある。

 とは言え、曲としてはやっぱり個人的には好きなもので、特にホーンアレンジとミックの地味ながらも曲の骨組みとなっているピアノが良い。短い間奏はガイ・バーカーによるフリューゲルホーン。こういう曲にこの楽器をぶつけるセンスもいいと思う。

(Alternate Vocal Version)
 Promotional Album "The Songs of Paul Weller"

 女性シンガーが歌うヴァージョンで、バッキングのギターやドラムの一部も差し替えられているようだ。ディーが歌っているという資料も見たが、全く声が違い、誰かは不明。

(Live Version)
Drums : Ian Mussington
Percussions : Steve Sidelnyk
Guitar : Simon Eyre
Bass : Dave Foster
Keyboards : Terry Devine King
Keyboards, Brass : Dashiel

収録作品
 DVD "Live at the Full House" (1987 Capitol Hanover)

 87年のツアーでは頻繁にプレイされていた。この曲も表記のDVDでのヴァージョンは走り気味で、ブートレッグで聴ける東京公演のヴァージョンの方が遙かに良い。間奏のフリューゲルホーンはここではフルートに変更されているが、これは良いアレンジ。Dashielという女性プレイヤーの素性は不明。

Angel

Hon Councilers:
Bass : Camelle Hinds
Mix : The Valentine Brothers

収録作品
 album "The Cost of Loving"

 アニタ・ベイカーのカヴァー。例によってポールとディーが交互にヴォーカルを取るが、寄ってたかってもオリジナルにかなっていない。妙に淡々としているのがあまり効果的に聞こえないのだ。より軽快に仕上げるのが狙いならある程度は成功していると思うけど。

 前述の通り、Heaven's Aboveとのカップリングでシングルになる予定もあったと言うが、弱いと言わざるを得ない。

 シンセベースとカーメルによるスラップベースを場面によって使い分けるアレンジは格好良い。その分ドラムに色気が無いのが残念だ。ホワイティだと思うが、打ち込みにも聴こえる。

 余談だが、アニタ・ベイカーの曲でFairy Talesというのもある。

Fairy Tales

(Studio Version)
Hon Councilers:
Trumpet : Guy Barker, Roddy Lorimer, Luke Tunney
Trombone : Chris Lawrence, Pete Thams,Ashley Slater
Congas & Percussions : Steve Sidelnyk
Mix : Curtis Mayfield

収録作品
 album "The Cost of Loving"

 カーティス・メイフィールドがミックスを担当したあまりにも「いかにも」なホワイト・ソウル。

 ホーン、ドラムス、ミックのエレピとオルガン、ポールのカッティングまでいちいちキマっていて、深く考えずに聴く分には最高に心地よく、ファンキーで踊れる曲。だが「じゃあTSCとしてどうなのよ」って話になるとどうにも困ってしまう。むしろソロ1stのころにやっていればもう一捻りあって面白くなりそうな感じもあった気がするのだけど……。残念ながらヴォーカルのディレイや唐突に戻ってくるリプライズ的なエンディングなど、ここでの「一捻り」(カーティスによるもの?)はもう一つピリっとしない感じだ。

(Live Version)
 87年ツアーの定番の一つ。レコードでは重要な位置を占めていたホーンが無いのがやはり物足りない印象。スタジオ版の長所と短所の印象も変わらず。だが、サウンドそのものは締まりがあって悪くない。エンディングは勿論フェイドアウトせずにメインリフからリプライズ部分にそのまま続く。

Heaven's Above

(Studio Version)
Hon councillers:
Bass : Camelle Hinds
Congas : Steve Sidelnyk
Saxophone : Billy Chapman
Violin : Anne Stephenson
Mix : Mathew Kasha

収録作品
 album "The Cost of Loving"

 公平にみてこのアルバム最大の名曲はこの曲と思っていいと思う。キャッチーなメロディと、殆どツアーメンバーで録音された一体感のあるバンドサウンド。当然のようにこの時期のライヴでも必ず演奏されていた。歌詞にさりげなくCost of Lovingというフレーズが出てくるので、リリース当時ジャケを見ずに漠然と聴いていた時この曲がタイトル曲だと勘違いした記憶がある。まあ「裏タイトル曲」と呼んでも全く差し支えはないだろう。

 リードヴォーカルは例によってポールとディーが分け合う。ファンキーなビート感は主にカーメル・ハインズのベースが担っていて、ホワイティのフレージングはむしろ硬質。ヴァイオリンで参加のアン・スティーヴンスンは過去にもA Stones Throw Awayに参加したことのあるプレイヤー。

 Angelと両A面のシングルとしてリリースされる予定もあったと言うが、キャンセルになっている。まあ、いくら名曲とは言えアルバム収録曲同士のカップリングでは魅力も薄いリリースとなったのも予想に難くないが。

(7" Edit)
収録作品
 US Promotional Single "Heaven's Above"

 アメリカでもシングルカットの予定があり、結局リリースは見送られたが、フルヴァージョンと7インチ用のエディットを収録したプロモ盤が制作された。12インチと7インチ両方出ている。

 元々6分以上あるオリジナルを4分ちょっとに編集したヴァージョンで、イントロのリフに入る前を切り、あとはコーダ部分の歌詞に入った直後にフェイド・アウトというあまり捻りのないもの。

(Live Version)
 Bass : Paul Powell
 Keyboards : Mark Edwards
 Guitar : SImon Eyre
 Percussions : Frank Ricotti

収録作品
 In Concert (1987 Hammersmith Odeon)
 Live at the Full House (1987 Capitol Hannover)

 In Concertにはライヴヴァージョンが収められている。87年のツアーからのもので、この時期不参加が多かったホワイティは参加しているもののハインズ等は不参加。セカンドギタリスト(というより、当時あまりギターを弾かなかったポールの穴を埋める為のプレイヤー)が参加している。それでもあまりアルバムと変わらない感じのかっちりした演奏だ。ヴァイオリンパートはシンセで代用されている。
 
 DVD Live at the Full Houseにはホワイティ復帰前のヴァージョンが収録されているが、テンポも速めで、なんとなく全体にとっ散らかった印象。同年日本公演のヴァージョンの方がもう少しまとまりのある演奏に聞こえる。

Right to Go

Hon Councilers:
Percussions : Steve Sidelnyk
Rappin' : The Dynamic Three
Mix : Jeremy Wakefield 

収録作品
 album "The Cost of Loving"

 アルバムCost of Lovingの2曲目は、当時の若手ラッパー、The Dynamic Threeをフィーチャーしたナンバー。以前のA Gospelよりも当時のブラックミュージックっぽいサウンドになっている。これはアルバム全体の特徴ではあるが。ただし、「ぽく」以上にならないのもまた、アルバム全体の特徴でもある。

 それでも以前のものよりはずっと本物っぽいラップナンバーになっている。ポールとディーのヴォーカルパートが気が抜けた感じなのは狙いだと思われる。歌詞は相変わらず政治的だが、このアルバム中では少数派となっている。但し、ラップ部分の歌詞はブックレットに記載されていない。

 スラップベースが収録されているが、これはポールのプレイだろうか?単純でただ引っかけてるだけ、という感じでもあるのでその可能性は高い。アタックの強いシンセベースかとも思ったが、ベースギターっぽいな。

 The Dynamic Threeがいないと演奏出来ない曲の為、ライヴでは披露されていない。

All Year Round

収録作品
 7" & 12" Single "It Didn't Matter"
 CD "Complete Adventures of the Style Council"

 日本以外でIt Didn't MatterのB面としてリリースされた曲。

 Big Boss Grooveのリメイクとも言える曲で、サビはオミットされているがヴァースは基本的に同じだ。但し、原曲(?)ではポールとミックの共作と鳴っていたがここではポールの単独作扱い。

 ポールが弾いているらしい硬質なベースのリフをメインに進行する、ソウルジャズ風を狙った感じの曲。淡々と進行し、盛り上がらないまま終わってしまう感じがB面っぽい。後にポールの初期のライヴで取り上げられていたが、その時はジャズ色も濃くなり、もっとメリハリの利いたアレンジになっていた。

 日本ではこの曲をフォローするために(?)Cost of Lovingがシングルカットされ、そのB面に収録された。CDで聴くにはボックスセットが一番手っ取り早いと思われる。他のコンピレーションなどで見かけた記憶はない。

Who Will Buy

収録作品
 Japanese 7" & 12" Single "It Didn't Matter"
 CD Here's Some That Got Away

 日本盤シングルIt Didn't MatterのB面に収録された曲。ミュージカル Oliver!のサントラ曲のカヴァーで、Ghost of Dachauをラフにしたような感じのアレンジにしてポールとミックだけでプレイされている。実際には正式レコーディングではなく、デモ録音程度のものだったのかもしれない(Call Me等のデモヴァージョンとサウンドの質感が似ている)。

 UK盤などのシングルにはAll Year Roundが収録されたため、日本以外では長年未発表となっていたが、Here's Some That Got Awayで初登場した。勿論、CDとしても初である。

 余談だが、付けたタグは間違いではない。日本先行発売のIt Didn't Matterは86年に出ているため、この曲の初出は87年ではない、と言うコトになるのだ。

It Didn't Matter

(7" Edit / Album Version)
Mix : The Valentine Brothers

収録作品
 7" Single "It Didn't Matter" (7" Version)
 12" Single "It Didn't Matter" (Album Version)
 album "The Cost of Loving" (Album Version)

 アルバムCost of Lovingからの先行カットであり、日本では更に本国に先駆け、マクセルのカセットテープ(時代が・・・)のCMソングとしてリリースされた。また、この頃からディーも正式メンバー扱いになり、Hon Councilersとして記載されなくなる。

 ミックがデジタルシンセを多用しはじめたのがこの時期の特徴で、いかにもな音が散見される。特にシンセベースは曲そのもの印象を強くしているパートで、事実上のメインリフを担う。曲調は露骨に「黒っぽい線」を狙うのだが、本人達の資質(ディーを含む!)がどうしてもちゃんとそれっぽくならないのが逆にいい感じになってしまっている。結局はどう聴いてもロック。ハネないが故に気持ちよい16ビートと言うのもあるのだ。

 7"に収録されたのは編集ヴァージョンで、イントロの一部と後半のヴァースをカットして1分近く短縮している。余談だが、国内盤7”は先行発売のせいか、UK盤より音圧が高い。

(instrumental)
収録作品
 12" Single "It Didn't Matter"

 Shout to the TopやSolid Bond in Your Heart同様、所謂「カラオケ」である。CD化されていないので貴重と言えないこともないが、積極的に聴きたいものではない。

(Live Version)
 87年のツアーでは当然演奏されている。印象的なシンベのリフはベースギターに置き換えられている。スティーヴ・シデルニクのエレクトリック・パーカッションがレコード通りの硬質なビートを演出する。テンポは若干速めになっている印象。

Mr. Cool's Dream

収録作品
 7" & 12" Single "Have You Ever Had It Blue"
 CD "Complete Adventures of the Style Council"

 ミック主導ジャズナンバーシリーズの事実上の最終作。過去のどの曲よりもジャズっぽさが漂っている。ホワイティのプレイが明らかにDropping Bombs on the Whitehouseより向上しているのには注目したい。

 ミックはピアノとヴァースでメロディを弾くシンセを担当するが、やはりバッキングとソロのアコースティックピアノが気持ちよい。

 ベースはおそらくA面と同一のプレイヤーと思われ、ポールは不参加の可能性が高い。彼にしては本格的すぎるウッドベース(ソロもあり!)なのがその根拠。タイトルも映画の登場人物から取られたというので、映画用のレコーディングセッションの副産物だろう。(そう考えるとクラーク・ケント説は矛盾するのだけどね)

Have You Ever Had It Blue

(7" Version)
Hon Councilers:
Saxophone : Billy Chapman
Arrangement : Gill Evans

収録作品
 7" & 12" Single "Have You Ever Had It Blue"
 CD "Greatest Hits"

 映画Abusolute Beginnersのサウンドトラックからのシングルで、With Everything to Loseのリメイクヴァージョンである。とは言っても、同曲の項で述べた通りこちらの歌詞がオリジナル。但し、録音は新規に行われていると思われる。

 ホーンのアレンジをギル・エヴァンスが行っているのがトピック。サックスのビリー・チャップマン(たっぷりソロを吹いている)だけがクレジットされているが、エヴァンスがアレンジしたホーンセクションは複数の奏者が参加していることは間違いない。ホーン以外にもコーラス隊にノークレジットのプレイヤーが参加していると思われる。

 また、ベースもポールとは思えなく、ウッドベースが使われていることから「実は84〜85年に(With Everything to Loseになる前に)初期ヴァージョンが録られていたのではないか?」という疑問も湧く。このヴァージョンのクレジットに「Additional Production」の表記があり、86年の追加録音をプロデュースしたという意味ではないだろうか?

 実際、限定カセット付きヴァージョンに「Originally Recorded March '84」という記載があると言う情報があり、だとするとベースはCafe Bleuで数曲弾いていたクリス・ボストックの可能性も考えられる。

 7インチ収録のものはイントロがホーンのリフから始まっているショートヴァージョン。

(Uncut Version)
収録作品
 12" Single "Have You Ever Had It Blue"
 CD "Singular Adventures of the Style Council"

 基本的には同じ録音だが、ベースとサックス、パーカッションによるイントロが長く収録されていて、ジャズっぽさはこちらの方が上。全体で1分以上長くなっている。Singular Adventures収録の「12" Version」はこれと同じもの。

 なお、このシングルがリリースされた後もライヴではWith Everything to Loseが演奏され続けた。

(Original Soundtrack Version)
収録作品
 Original Soundtrack Album "Absolute Beginners"

 サントラ盤収録ヴァージョンはUncut Versionより更に長い(演奏そのものも違う)イントロが収録されていて、ベースとコーラスから始まり、ホーンなど楽器がどんどん増えていって、イントロだけで2分20秒以上ある。歌に入ってからのティンバレスのフィルやストリングスのオーバーダブなど、トラックもかなり大きく違うヴァージョン。TSC名義での作品には収録されていないようだ。

(Live Version)
 Have You Ever Had It Blueとしてのライヴ演奏は1984年、つまりホワイティが新しい歌詞を書いてくる前に披露されたものが存在するが、この時点で既にこのシングルとほぼ同様のアレンジを聴くことが出来る。

2014年3月25日火曜日

(When You) Call Me

(Single Version)
収録作品
 7" & 12" Single "Come to Milton Keynes"
 7" & 12" Single "Boy Who Cried Wolf"
 CD "Our Favourite Shop (Deluxe Edition)"

 TSCのB面曲中で最高の名曲(ダブルAサイドのBig Boss Grooveを除く)。これもダブルAサイドでも良かったくらいだ。

 ミディアムテンポのバラードで、Long Hot Summerの続編とも言えるような曲調を持っている。エレクトリック・ドラムやシンセベースを多用したサウンドは残念ながらアウト・オブ・デイトな感触を持ってしまっているが、それでもメロディの良さは全く色褪せていない。サウンド的にやり過ぎ感がある(とは言っても85年当時は全く普通の音だった)部分を除けば基本的にはシンプルな楽曲だ。

 このオリジナルヴァージョンは意外にもボックスセットまでCD化されず、他にもD.E.くらいしか収録されていない。あまりにも勿体ない事実だ。

(Live Version)
Tenor Saxophone : Billy Chapman
Alto Saxophone : Mike Mower
Trombone : Chris Lawrence
Trumpet : Guy Barker
Trumpet : Stewart Prosser
Keyboards : Helen Turner
Bass : Camelle Hinds
Percussions : Steve Sidelnyk

収録作品 
 album "Home and Abroad" (1985 Internationalists Tour)
 US 7" Single "(When You) Call Me / Internationalists" (1985 Internationalists Tour)
 DVD "The Style Council on Film" (1985 Wembley Arena)
 Australian Limited 7" &12" EP "(When You) Call Me" (1985 Sports & Entertainment Centre, Melbourne)

 ライヴでも当然のように定番となり、楽器編成の限界から逆にサウンドがナチュラルかつダイナミックなものとなり、それが曲にとってはいい効果になっている。ホワイティのハイハットはスタジオ盤より冴えている。間奏のシンバルとシモンズの連打にも注目。また、エンディングにはYou're The Best Thing同様の新規パートが加えられた。

 余談だが、後にトレイシーがカヴァーする際、このアレンジが一部導入された。この時のドラマーはホワイティだった。

 スタジオ版は両A面シングルにならなかったが、ライヴヴァージョンはシングルカットされている。Home and Abroadのヴァージョンはアメリカで7インチのみのリリース、また、メルボルン公演のヴァージョンもオーストラリアで限定発売された。どちらもB面はInternationalists。そしてメルボルン公演ヴァージョンは12インチも出ていて、メドレーとして演奏されていたLong Hot Summerから繋がるヴァージョンが収録されている。

 87年のツアーでも演奏されている。東京のヴァージョンは若干テンポが速いようだ。

(Demo Version)
収録作品
 CD "Here's Some That Got Away"
 CD "Our Favourite Shop (Deluxe Edition)"

 Here's Some That Got Awayで発掘された別テイク。ポールとミックだけで録音されたシンプルなヴァージョン。ミックのピアノをバックにポールが歌うというスタイルはアルバムヴァージョンのMy Ever Changing Moodsを彷彿とさせるが、これを聴けば同曲に劣らないメロディを持っていることがよく解る筈だ。

Our Favourite Shop

(Album Version)
Hon Councilers:
Trumpet : Steve Dawson

収録作品
 album "Our Favourite Shop"
 US 7" Single "Boy Who Cried Wolf"

 アルバムタイトル曲となっているのは唯一のインスト曲。この曲でも、他の曲の幾つか同様のラテン風のリズムアレンジがなされている。シンセベースのリフにオルガンによるメロディが曲の中心を成し、トランペットのソロがパワフルに曲を盛り上げて行く。

 US盤のInternationalistsでは、アルバムタイトルから下ろされただけではなく曲そのものがカットされてしまっている。そのかわりBoy Who Cried WolfのB面としてリリースされた。

(Club Mix)
Hon Councilers:
Trumpet : Steve Dawson

収録作品
 12" Single "Come to Milton Keynes"
 12" Single "Boy Who Cried Wolf"
 CD "Our Favourite Shop (Deluxe Edition)"

 Come to Milton Keynes(またはBoy Who Cried Wolf)の12インチに収録されていたリミックスヴァージョン。イントロや中間部でパートの抜き差しも行われてはいるが、全体にはあまり印象が違わない、ロングヴァージョンという趣。アルバムヴァージョンでは聴けないドラムパートや、フェイド・アウト後に続いていた更にエキサイティングなトランペットのソロも聴くことが出来る。CD化には恵まれていなかったが、D.E.にめでたく収録された。

(Alternative Version)
収録作品
 CD "Our Favourite Shop (Deluxe Edition)"

 D.E.で初登場したデモヴァージョンのうちのひとつ。シンセベースのパートはリリースされたテイクとほとんど同じだが、全体に非常にラフな作りだ。パーカッションパートの一部は打ち込みと思われ、そこにドラムとコンガがダビングされている。勿論トランペットは入っていない。

(Live Version)
Keyboards : Helen Turner
Bass : Camelle Hinds
Percussions : Steve Sidelnyk
Guitar : Rob Glanfield

収録作品
 CD "Home and Abroad" (1985 Internationalists Tour)
 DVD "The Style Council on Film" (1985 Wembley Arena)

 85年ツアーでのみ演奏されたライヴヴァージョンではベースがカーメルによるベースギターに代わり、更に全体のリフをRob Glanfield(当時のサウンドエンジニアも兼ねていたギタリスト/キーボーディスト)が担当、ジャズっぽいソロも弾いている。ホーン抜きのステージでも対応できるアレンジにするためか、スチュアート・プロッサーがソロを吹くことはなかった。カーメルのアドリブ風のヴォーカル(?)も聴けるのが楽しい。

With Everything to Lose

(Studio Version)
Hon Councilers:
Vocals : Dee C.Lee
Bass : Kevin Miller
Flute : Mike Mower
Saxophone : Billy Chapman

収録作品
 album "Our Favourite Shop"

 オリジナルは後に発表されるHave You Ever Had It Blueだが、ホワイティが新しい歌詞を書いてきて、それが採用されてこのタイトルに変更された。TSCの曲で、彼が歌詞を書いた唯一の曲である。

 この頃のTSCで流行っていた(?)ボサノバ風のリズムを持つ曲。ビリー・チャップマンのサックスとマイク・モウワーのフルートが全編にフィーチャーされていて、よく言われる「お洒落」と言うイメージの特に強い曲といえるかもしれない。

(Everything To Lose [Blue Remix])
収録作品
 CD "Our Favourite Shop (Deluxe Edition)"

 D.E.で発掘された未発表ヴァージョン。Blue Remixとなっているが、コレもデモヴァージョンで、よりソフトな演奏となっている。3人でのラフな演奏のため、当然ホーン抜きとなっていて、代わりにポールのジャジーなギターが楽しめるヴァージョンになっている。

 余談だが、この曲の本来のタイトルは勿論「With」が付いているが、このテイクには何故かそれが無い。で、実は邦題が「エブリシング・トゥ・ルーズ」で、図らずもこちらに近づいた形になっている。

(Live Version)
Tenor Saxophone : Billy Chapman
Flute : Mike Mower
Trombone : Chris Lawrence
Trumpet : Guy Barker
Trumpet : Stewart Prosser
Keyboards : Helen Turner
Bass : Camelle Hinds
Percussions : Steve Sidelnyk

収録作品
 album "Home and Abroad" (1985 Internationalists Tour)
 DVD "The Style Council on Film" (1985 Wembley Arena)
 DVD "Live at Full House"  (1987 Capitol, Hannover)

85〜87年のライヴではよく取り上げられ、スタジオでも参加した二人のホーンセクションの見せ場となっていたが、ホーン抜きのライヴでも定番曲だった。その際にはオルガンソロがフィーチャーされるアレンジになる。ボサノバにあるまじき荒々しいホワイティのドラミングも白眉。

 87年ツアーもホーン隊がいないのでオルガン中心のアレンジ。サックス兼任のキーボーディストが参加しているのに吹かないのが不思議。また、この時期のドラマーはボサノバがあまり叩けないのか基本的にヴァースでは刻みに徹している感じだ。

Luck

(Studio Version)
収録作品
 album "Our Favourite Shop"

 溌剌としたメロディのポップな曲で、だからと言ってCome To Milton Keynesの様に政治的な歌詞が付くでもなく、素直にタイトル通りの内容が歌われる、逆に珍しい曲。サウンドもシンプルそのもので、このアルバム中で唯一ゲストを迎えずに3人で録音された曲になっている。Solid Bond In Your HartやMy Ever Changing Moodsの小粒な続編、という印象。

 完全に余談だが、一時期FM横浜の交通情報でかかるバックのBGMがこの曲のパクりにしか聴こえないものだった(カヴァーではない。微妙に違う)。

(Live Version)
収録作品
 12" Single "See the Day" (Dee C. Lee) (1985 Tour)

 85年ツアー初期に演奏。ライヴではポールに代わり、アルバムヴァージョンでは不参加だったディーがヴォーカルをとっている。その演奏は彼女のソロ12インチ、See The Dayに収録されている。参加メンバーはクレジットされてないが、いつものメンバーだろう。この時期のシングルなどに収録されたヴァージョンは大抵リバプールかメルボルンのライヴなので、そのどちらかの可能性も高い。

The Lodgers

(Or She Was Only The Shop Keepers Daughter)
Hon Councilers:
Vocals : Dee C.Lee

収録作品
 album "Our Favourite Shop"

 ポールとディーが交互にヴォーカルをとるソウルフルな曲。若干遅めのテンポで、ディーのヴォーカルから始まるのはアルバムヴァージョン。幾つかあるヴァージョンの中でこれが一番ナチュラルな響きを持っている。ミックのオルガンソロが聴けるのはこのテイクだけ。テンポも遅めで、後の硬質なシングルヴァージョンに慣れると跳ね気味のゆったりしたリズムが妙に心地よいのだ。

 この曲には元々Or She Was Only The Shop Keepers Doughterというサブタイトルがついていたが、実際にこの表記が見られるのはこのアルバムヴァージョンだけで、シングルからは削除されている。


(Club Mix / Dance Mix)
Hon Councilers:
Vocals : Dee C.Lee

収録作品
 12" Single "Come to Milton Keynes"
 12" Single "Boy Who Cried Wolf"
 US 12" Single "Boy Who Cried Wolf" (Dance Mix)
 CD "Our Favourite Shop (Deluxe Edition)"

 パーカッションパートを大量にダビング、逆にヴォーカルの大半をカットし、大胆なリミックスを施したヴァージョン。TSCのリミックスのなかでも最もオリジナルとの差異が大きいもののひとつ。いかにも80年代的リミックスではあるが、ヴォーカルの抜き方が大きいせいで逆に今でも「使える」印象のあるトラック。

 パーカッションはクレジットが無いからホワイティと思われるが、後述する12インチヴァージョンで聴けるプレイと非常に似ているのでスティーヴ・シドルニクが担当している可能性も考えられる。

 元々はCome To Milton Keynes(またはBoy Who Cried Wolf)の12インチに収録。また、Dance MixというタイトルでUS盤のBoy Who Cried Wolfとカップリングされ、12インチとしてリリースもされている。

(Extended Mix / 7" Version)
Hon Councilers:
Vocals : Dee C.Lee
Trumpets : Guy Barker,Roddy Lorimer,Luke Tunney
Trombone : Chris Lawrence,Pete Thams,Ashley Slater
Congas & Percussions : Steve Sidelnyk

収録作品
 7" Single "The Lodgers"

 シングルカットされた際、この曲は完全にリメイクされた。ドラムパートはほとんどエレクトリックドラム(キックは打ち込みか?)によるものに変更、手数の多いシンセベースに大量のホーンセクション、イントロもギターとシンセによるものに変更され、テンポも速くなった。表記はリミックスという扱いだが、新規録音である。

 7インチヴァージョンではエンディングにポールによるヴァースの歌詞をフェイクして歌うパートがついていて、そのままフェイド・アウトする。実はこのヴァージョンはCD化されていない。

 なお、ジャケには「Featuring Dee C. Lee」と大書きされているが、アルバムヴァージョンより歌う部分が増えたと言うことではない。元々フィーチャーされていた、ということだが。

(Extended Mix)
Hon Councilers:
Vocals : Dee C.Lee
Trumpets : Guy Barker,Roddy Lorimer,Luke Tunney
Trombone : Chris Lawrence,Pete Thams,Ashley Slater
Congas & Percussions : Steve Sidelnyk

収録作品
 12" Single "The Lodgers"
 CD "Greatest Hits"
 CD "Our Favourite Shop (Deluxe Edition)"

12インチヴァージョンは単にExtended Mixと表記されているが、実際には(当然と言うか)7インチからの延長ヴァージョンである。単純にエンディングのフェイドが遅いのではなく、こちらにはポールのアドリブヴォーカルは無く、ホーンのリフの後に更に追加のエンディングパートがある。The Lodgersを元にしたファンク・ジャムと言った感じの趣のパートだ。

 このヴァージョンも長年CD化されていなかったが、Singuler Adventuresがリニューアルされ、Greatest Hitsになった際にようやく収録された。Our Favourite ShopのD.E.にも収録されている。

(unrereased demo)
収録作品
 CD "Our Favourite Shop (Deluxe Edition)"

D.E.で初登場したスタジオデモ。ポールの非常にラフなソロヴォーカルで歌われる(サビはミック)。構成はアルバムヴァージョンの形ができ上がっている。イントロにヴォーカルパートは無いが、何かを乗せることを前提としているような作り。

(new vocal)
Hon Councilers:
Vocals : Dee C.Lee
Trumpets : Guy Barker,Roddy Lorimer,Luke Tunney
Trombone : Chris Lawrence,Pete Thams,Ashley Slater
Congas & Percussions : Steve Sidelnyk

収録作品
 CD "Singular Adventures of the Style Council"

Singuler Adventuresに収録されたヴァージョン。ヴォーカルパートが完全に新録され、ギター及びシンセの一部が差し替えられているようだ。他の曲の新ヴァージョン同様、あまり良い出来ではない。

 長さ的には7インチ準拠のため、このアレンジでエンディングのヴォーカルが聴けるのはこのベスト盤だけとなっているが、ここではフェイドアウトせず、12インチのファンクジャムの手前でばっさりとカットされるような形になっている。

(Live Version)
Tenor Saxophone : Billy Chapman
Trombone : Chris Lawrence
Trumpet : Guy Barker
Trumpet : Stewart Prosser
Keyboards : Helen Turner
Bass : Camelle Hinds
Percussions : Steve Sidelnyk

収録作品
 album "Home and Abroad" (1985 Internationalists Tour")

 85年〜87年のツアーで演奏された。初期にはアルバムのアレンジでもプレイされているが、一般的なライヴヴァージョンはシングルのアレンジ準拠で、7インチと12インチヴァージョン折衷という感じになっている。ポールのアドリブヴォーカルもあり、ファンクジャム風になってからホーンのリフが登場して終わる。流石にライヴではシングルのせわしないバスドラムは再現されていない。

 87年ツアーではオープニングとして登場することが多かった。アレンジは85年ツアーとほぼ同じだが、ホーンがいないため全体に隙間の多い音になっている。勿論エンディングのリフもカットされている。