電子書籍版

このブログの電子書籍ヴァージョンを発売中!。
Amazon Kindle Storeで300円。

The Style Council全曲解説 [Kindle版]

内容も改訂、その他付録コンテンツも大量に増補しました。
是非読んでみて下さい。

凡例

(ヴァージョン名)←公式のものが存在しない場合便宜的に付けた場合もある
Hon Councilers ←参加メンバー。特筆されない場合ドラムはSteve White、バッキング・ヴォーカルはDee C. Lee。(時期によってはHon CouncilerとしてWhiteやLeeも記載する)
主な収録作品←シングル、オリジナルアルバムと公式度の高い編集盤を優先して記載。
解説←独自の独断と偏見に満ちた解説。

2014年4月6日日曜日

Sure Is Sure

(Album Version)
収録作品
 album "Modernism : New Decade"

 ポールがカーメル・ハインズと共作したナンバー。シングルカットされる予定があったが、アルバム共々幻と消えている。12インチ用に8分22秒のリミックスも作られていたようだ。

 リズムは相変わらずなのだけどアルバムでは一番メロディックな曲であり、シングル化が予定されたのも頷ける。グルーヴ感もThat's Spiritual Feelingの次くらいに感じる。珍しくヴォーカルのミックスが大きめになっているのがポップに聴こえる要因の一つかも知れない。The World Must Come Togetherもこのくらいにすればまだ良かったのに・・・

 ベースはクレジットが無いが、生に聴こえるパートもある(シンセっぽい部分もあるのだけど)。だとすると作者のカーメルが弾いていると考えるのが自然か。コーラスにも参加している可能性がある?

(Live Version)
 89年のツアーでも新曲の中の目玉的存在だった筈だ。ライヴ時点では完全に出来上がっていた様で、RAHでも横浜でもほぼアルバム通りの演奏が聴ける。こっちは間違いなくカーメルがベースを弾いている(コーラスも取っている筈)。

 また、90年のヒットスタジオインターナショナル出演時にはポール、ミック、ホワイティ、カーメルの四人で当て振りではあるがこの曲の演奏シーンを見せていた。ライヴではないのだが、貴重なので記しておく。

Love Of The World

Hon Councilers :
Vocals : Paolo Hewitt

収録作品
 album "Modernism : New Decade"

 これもオーソドックスなハウスナンバー。パオロ・ヒューイット(=カプチーノ・キッド)がヴォーカルでクレジットされているが、イタリア語のセリフのパートを担当。リード・ヴォーカルはポールである。また、Oh Yeahと歌われる女性コーラスはディーではなく、多分サンプリング音源を使ったものだろう。

 全体にとっ散らかったアレンジでどうにも焦点が定まらない印象がある。8分を超えるのだけど、どこにも山が無くて場当たり的にパートを抜き差ししたり、色んな楽器を放り込んだりしているように聴こえる。ミックやポールのプレイもヴォーカルも特筆することは無い。どうにもピンと来ない曲。

 Sure Is SureがシングルカットされていればFree Love Mixと名付けられたこの曲の10分を超えるリミックスがB面になる筈だった。

That Spiritual Feeling

Hon Councilers :
Trumpet : Robert 'Kush' Griffin
Alto Sax : Maceo Perker
Tenor Sax : Pee Wee Ellis
Trombone : Fred Wesley

収録作品

 album "Modernism : New Decade"

 JB'sのホーンセクションをゲストに迎えた「打ち込みジャズファンク」。作者に名を連ねるマルコ・ネルソン(ヤング・ディサイプルズ)がクレジットは無いがベースも担当していると思われる。

 4人のホーンとミックのエレクトリック・ピアノのジャムを基本に出来ていて、ビート以外のほとんどのパートが生のため、アルバムのどの曲と比べても圧倒的に躍動感があるし、ファンキーだ。ポールもバッキングに徹してはいるが久々にホロウ・ボディのギターでジャジーな気分で弾いている様だ。マルコの貢献もあってか、ハウスと言うよりアシッドジャズの香りも漂う。

 この熱さを勿体なく感じたのか、ポールはソロになってから2回この曲をリメイクしている。リメイクと言っても、リズムセクションを生楽器に差し替えたリミックスを作っただけ、つまりTSC時代のミックやディー、勿論JB'sの音も残されている。そっちのヴァージョンでドラムを担当するのは勿論ホワイティ。マルコのベースとポールのギターも本人達により差し替えられている。

Hope (Feelings Gonna Getcha)

収録作品
 album "Modernism : New Decade"

 すこしメロウな雰囲気を持ったハウスナンバー。いや、全曲ハウスなんだけど。バッキングの生ピアノとワウギターが雰囲気を高めている。数回出て来るエレピのソロも良い。

 ヴォーカルは殆どタイトルのフレーズを繰り返すだけだが、Strength of Your Natureの時とは全くニュアンスが違う。あの熱さはポールがいかにシャウトしようと全然無く、むしろクールに抑制したサウンドを聴かせようとしている様だ。

 基本的に悪くない曲だけど、個人的には中盤のリズムソロがどうにもとっ散らかっていて苦手だ。なんか色々やりたいことを整理しないままアレンジしてしまった感じだ。それはアルバム全体にも漂うんだけど……

The World Must Come Together

収録作品
 album "Modernism : New Decade"

 若干遅めのBPMで、結構メロディアスな曲だが基本線はアルバム全体と同じようにハウスビートに埋め込まれている。しかし折角ポップなメロディが小さめにミックスされているのは残念な気もする。ダンスミュージックとしては正しいのかも知れないけど、ハウスにこだわらずに、せめてCost of Lovingの頃の様なアレンジにしていれば「ポップミュージックとして」もっと完成度が高くなったのでは?

 バッキングのエレピが格好良い。音色がいい。それから後半にヴァイブが出てくるが、これはおそらくミックがシンセで演奏していると思われる。

 89年のライヴで何故かプレイされなかった。ライヴ向けな気もするのだけど。

A New Decade

収録作品
 album "Modernism : New Decade"

 幻のラストアルバム、Modernism : A New Decadeの事実上のタイトル曲、というよりアルバム全体のイントロとでもいうべき曲。コードの雰囲気もアレンジも明らかに次に繋がるCan You Still Love Me?のヴァリエーションという感じだ。

 ヴォイスのサンプリングが使われるだけのインスト曲で、随所に登場するオーケストラヒットが時代の音。でも(Can You~もそうだが)今こういう「ピアノリフがバッキングのハウス」を聴くと逆に新鮮な気もする。

 89年ロイヤル・アルバート・ホールのオープニングに使われても不思議はなかったのだが、何故かライヴはCan You Still Love Me?単独でスタートする。そう言うワケでライヴ演奏は無い。

2014年4月1日火曜日

Everybody's On The Run

(Version One)
Hon Councilers:
Vocals : Brian J. Powell

収録作品
 7" Single "Long Hot Summer '89" (Edit)
 12" Single "Long Hot Summer '89" (Full)
 CD "Headstart for Happiness" (Edit)
 CD "Complete Adventures of the Style Council" (Full)

 Modernism : A New Decadeの収録曲で、当時は結局Long Hot Summer '89のカップリングとして世に出た。7インチと、廉価版コンピレーションHeadstart for Happinessにはエディットヴァージョンが、当時の12インチとボックスには8分のフルヴァージョンが収録された。Version OneはFreddie Bastoneのミックス。

 ブライアン・パウエルをヴォーカルに迎えたハウスナンバーで、ポールとディーはバッキング・ヴォーカルに徹している。ミックはエレピを弾いていると思われるが、ソロは無くこれもバッキングとしての演奏。全体的に特筆する様な部分の無い「普通の」ハウスだ。

(Version Two)
収録作品
 12" Single "Long Hot Summer '89"

 Norman Jay & TSCによるミックスとクレジットされていて、ロングヴァージョンの後半という感じでは無く別のリミックス。パウエルのヴォーカルとポールとディーのコーラスが別テイク(アルバムヴァージョンとも違う)になっていて、また、クラップとスネアの手数が(うるさいくらい)多くなっている。CDシングルは存在するが、他のアルバムでは未CD化。

(Album Version)
収録作品
 album "Modernism : New Decade"
 
 全体にディーのヴォーカルが目立ち、逆にブライアン・パウエルのヴォーカル(シングルとは全く違うフレーズを歌っている)は引き気味になっている。バッキングも全く違い、これはミックス違いというより完全な別ヴァージョンと言っていい。少なくともシングルヴァージョンより遥かに格好良い演奏だ。

 ミックもオルガンやエレピを弾きまくっているが、なにより大きく違うのが全体にフィーチャーされたトランペット。プレイヤーのクレジットは無いが、That's Spiritual Feeling同様にJB'sのメンバーが参加している可能性もある。

(Live Version)
 89年のツアーではシングルヴァージョンを少しテンポアップした感じで演奏されている。ヴォーカルもパウエルが参加している様だ。

Can You Still Love Me?

(Vocal)
収録作品
 7" & 12" Single "Promised Land"

 Promised LandのB面としてリリースされたが、本来はModernism : A New Decade用の新曲であり、こちらはオリジナル曲だ。TSCの曲としてはこっちの方が圧倒的に良いし、明らかにクリエイティヴである。

 素人臭いがストイックなハウスビートにサンプリングされたディーのコーラスとかなり遠目にミックスされたポールのヴォーカルが乗り、中盤ではミックのエレピのソロもフィーチャーされる。音の構成としては明らかにTSCのパーツを使っているのに、今まで明らかに無かった方向性であり、こういうことを平気でやるのがTSCらしさだということを思い出させてくれる。

(Dub)
収録作品
 12" Single "Promised Land"

 ダブとは言っても、よく80年代に(勘違いして?)命名されていたように単なるインストと言ってもいい。要するにカラオケであり、ウェラーのヴォーカルは出て来ない。ベツにディレイがかかるワケでもないし。こういうのをダブと呼ばないで欲しい。

(Club Mix / Club Vocal)
収録作品
 12" Single & Ltd. 12" Single "Promised Land"

 通常盤12インチとJoe Smooth Mixの12インチにカップリングされたヴァージョン。名前は違うが同じ物。日本ではリリースされなかった。

 これも8分に及ぶロングヴァージョンで、フロアを意識した淡々としたビートが続く。この曲はこういうミックスが非常に映える。

(Album Version)
収録作品
 album "Modernism : New Decade"

 結局89年にはリリースされず、ボックスセットで初登場したアルバムミックス。アルバムオープニング曲から繋げられており、シングルヴァージョンより若干テンポも上がっているように聴こえる。繋ぎ部分だけかな。シングル同様のリズムに切り替わってからはオリジナル通りのテンポに聴こえるのだけど。ミックスとしてはそれほど大きくは違わない。

(12 O'clock Dub)
収録作品
 Ltd. 12" Single "Promised Land"

 短めのリミックスだが、前述のダブミックスよりはこちらの方が(80年代基準とはいえ)比較にならないくらいダブらしい仕上がり。かなりパーカッシヴに仕上げられていて、個人的には好みのミックス。細かいクラップが気持ちよい。こっちはヴォーカルパートの「使わなさ加減」も良い塩梅。

(Live Version)
 89年のツアーでもフィーチャーされ、シングルより遥かにストレートなビートに乗せて演奏された。勿論ディーも生で歌い、ポールにハーモニーをつけている。

Promised Land

 (Radio Edit)
Hon Councilers:
Vocals : Mary,Benita and Derek

収録作品
 7" & 12" Single "Promised Land"
 CD "Singular Adventures of the Style Council"

 ベストアルバム用の新曲としてリリースされた曲だが、キャンセルされたアルバムModanism : A New Decade関連の作品として考えるべきだろう(この曲自体はアルバム用ではなかった)。シングルとしてリリースされたのは3分弱にエディットされたヴァージョン。

 TSCのヴァージョンと同じ年、つまり89年にジョー・スムースがリリースした曲を間髪入れずにカヴァー。アレンジも基本的に大差なく、リフやリズムアレンジまで殆ど同じになっている。違うのはやっぱりシンガーの資質で、ちょっと気だる目の、クールなオリジナルに対しどうしても熱さ、というより力みが出てしまうのがポールだ。好みの差はあるとは思うが、個人的には原曲に軍配を上げたい。

 見慣れないシンガーがクレジットされているが、明らかにディーよりソウルフルなヴォーカルが聴こえるので、それが彼らの声だろう。また、エンジニアとしてブレンダン・リンチが参加してるのは見逃せない。まだ独特のダビーなミキシングは聴けないが。

(Longer Version / Club Mix)
収録作品
 12" Single "Promised Land"
 Japanese 3" CD Single "Promised Land" (Longer Version / 5:08' edit)
 CD "Complete Adventures of the Style Council" 

 シカゴ・ハウスのカヴァーだが、リミックスを担当したのはなんとデトロイトの重鎮、ホアン・アトキンス。おそらくカーティス・メイフィールド(前作Fairy Tailsのミックス)に次ぐ大物ゲストだ。フロア仕様とはいえ「使える」と「聴ける」のバランスが絶妙なミックスになっている。

 日本盤CDシングルに収録されたのは5分8秒だったが、英国盤の12インチや後のボックスに入ったのは同じ名前で7分を超えるヴァージョン。単純に長さが違うだけでもないようで、Longer Versionが5分、12インチなどのClub Mixというクレジットのものが7分ヴァージョンなのかも知れない。ボックスの表記は誤記か?

(Pianopella)
収録作品
 12" Single "Promised Land"

 ヴォーカルとピアノパートを抜き出してリミックスしたヴァージョンで、これもDJユースを多分に意識したものだと思われる。うっすらとハイハットも聴こえるのだが。

(Joe Smooth's Alternate Club Mix)
収録作品
 Ltd. 12" Single "Promised Land"

 限定12インチに収録されたオリジネイター自らの手によるリミックス。だからと言って特別な印象があるものではなく、ラジオエディットよりフロアっぽく、特に前半はLonger Versionより聴きやすい、ある意味気が利いたミックスとなっている。後半からはほぼインスト状態になっている。ウェラー達はもしかしたらこのヴァージョンの後半部分とPianopellaの2枚使いを推奨したかったのかも知れないが・・・

(Brothers In Rhythm DMC Remix / Latin Orchestral Mix)
収録作品
 Promotional LP "Mixes 1 (DJ Members only) "
 
 DMCなるDJネットワークのメンバー向けプロモ盤に収録されているミックス。ホーンやピアノ、オーケストラなどが大量にオーバーダブされ、かなり他とは趣の異なるミックスになっている。

 プロモ盤はおそらく入手困難だが、このヴァージョンは同ネットワークのサイト、dmcdownload.comから現在でも入手可能。ミックス名はレコードとは異なり、Latin Orchestral Mixとなっているが、おそらく同じヴァージョンと思われる。

(Live Version) ライヴでは89年のロイヤル・アルバート・ホール等でプレイされている。シングルヴァージョンに準拠した演奏の様だ。